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34*S ページ34

「…面白いナ」


ぽつりと呟いたその言葉に被せるように、堕天人は宮田の胸ぐらを掴んで持ち上げる。

大きくて力の強いそいつは、片手で軽々と宮田の足を宙に浮かせた。


「ぐ…っ、」


宮田は苦しそうにその手に爪を立てるけど、堕天人はビクともしない。

そいつは宮田を捕まえたまま振り返り、玉の目の前まで歩いた。


「…ホレ、愛しの天使はここにいルぞ?」

「…くっ、そ…」


手を伸ばせば届きそうな距離まで近づいて、ちらつかせるように挑発する堕天人。

腹の立つそれが、もどかしくて、くやしくて。


「愛情…か。注いでミろ」

「っ!?」


次の瞬間、そいつは宮田を投げるように放ると、後頭部を掴んで玉の顔に押し付けた。



…ちゅ、っ。



少し離れたここまで聞こえてくる、唇がぶつかる音。

悔しさからか、愛しさからか、宮田の瞳からは涙がこぼれた。


「…ふ、っんぅ……」

「…ぅ?」


抑えつけられているため離れられず、濃厚な口づけに変わっていく。

そうすればさすがに玉も瞳を開けて、その光景に目を見開いた。


「んんっ!?ん〜っ!!」

「ぶ、…ったま、…んくっ」

「はははハはは!どうだ天使!?切レた唇は痛いカ!?」


…でも、それは堕天人の意に反する結果になっていた。


「…ん、は…っ」

「んぅ…ん、んっ」


もう、抑えつけられているからとかじゃない。

宮田は両手で玉の頬や髪をぐしゃぐしゃに撫で回して、何度も角度を変えて唇を貪っていく。

だけど乱暴じゃなくて、優しくて、優しくて…。


愛おしそうに見つめる瞳は、確かに玉を映して揺れていた。


「……フっ」


堕天人はそっと手を離すと、玉にぐるぐる巻き付いた鎖をほどいた。

そして背中から垂れ流れた血を指で掬うと、スラリとどこかへ去って行った。

最後に見せた笑みが、真っ黒く見えたのは…俺だけなのかな。


「…た、たま!」

「宮田!」


ハッと我に返った俺たちは、慌ててふたりの元に駆け寄る。

未だに玉の唇を夢中で食む宮田の頭に、横尾さんの強烈な平手が飛んだ。


「いって!?」

「いつまでやってんだ、馬鹿!はやく、みつたちと合流して逃げるぞ!」

「…わ、った…」

「たま、久しぶり。こわかったね」

「…う、うぅ〜っ」


横尾さんとの再会と、その変わらない安心感に、ボロボロと泣き出す玉。

鬼の居ぬ間に、とはまさにこのことだ。

ニカの肩を借りながらフラフラと立ち上がる玉を見て、俺は何かこみ上げてくるものをぐっと堪えた。

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- 初めまして。ひっそりファンで何度も作品を読み返している者です。すぐ引き込まれて読むのがいつも楽しいです。題材材料となる専門的知識がすごいですね。しっかり勉強熟読して作品にされてるからファンタジーでも抵抗無く読めるのだと思います。更新嬉しかったです。 (2020年12月7日 14時) (レス) id: 86cd2f1e13 (このIDを非表示/違反報告)
nanaco(プロフ) - こんばんは(TT) おまけのお話、すごく大切に読ませて頂きました……図々しくもSNSで作品名を出させて頂いた者です(;ω;) 作品の世界にどっぷりとハマり数日間余韻が抜けなくて^^; がじゃいも…の台詞のところで涙腺やられました(TT) 本当に大好きな作品です… (2020年12月6日 0時) (レス) id: a7b3edb10a (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - シンプルにすばらしいです…なきました (2019年8月28日 17時) (レス) id: f95f9b47d8 (このIDを非表示/違反報告)
なぁ(プロフ) - はじめまして。読み始めたら止まらなくて一気に読んでしまいました。まっしろたまちゃんかわいいし可哀想だし読みながら号泣してしまいました…!素敵なお話ありがとうございました!谷森山さんの他のお話も読ませていただこうと思います (2017年6月20日 1時) (レス) id: 6204cccf27 (このIDを非表示/違反報告)
谷森山(プロフ) - ひよさん» はじめまして。お返事遅れまして申し訳ありません!最後までお付き合いくださりありがとうございました!ご満足いただける作品になっているようで安心いたしました!たまちゃんは永遠の天使です(ドヤァ)他作品でも、またよろしくお願いしますね(*^^*) (2017年6月6日 18時) (レス) id: 9b9168131d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:谷森山 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2016年6月15日 4時

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