15*Ki ページ15
「で、その俺を拾ってくれたのが当時中学生だった藤ヶ谷」
宮田はポカンと口を開けたまま、俺の話を相槌すら打たずに聞いていた。
嘘はひとつも吐いていない、すべて真実だ。
「初めて北山を見つけたときは、そりゃ驚いたよ。学校の裏山に、人が倒れてるんだから」
藤ヶ谷は懐かしむように微笑むと、カップのお茶を少し啜った。
あれから15年も経っているのかと思うと、本当に月日が流れるのは早い。
「…きたみつは、会話できたの？」
「…それなんだよな。天使は全世界の言語に理解があるんだ。だから藤ヶ谷が最初に話しかけてきたとき、“日本語だからここは日本なんだ”って思ったよ」
「にぽん？」
玉は昔から日本が大好きだった、それは本当だ。
俺との会話は日本語だったし、食事もお米を好んでいた。
だからこそ、なぜ今こんなに会話できないのかがわからない。
藤ヶ谷たちが仕事の間、全世界の言語で会話を試みた。
結果として天使独特の言語はある程度覚えてるみたいたけど…長く会話はできなかった。
「…宮田、玉を見つけたときの状況を、できるだけ詳しく教えてほしい」
あんなに可愛がってた子が、なんでこんな風になってしまったのか。
俺にはそれが知りたかった。
もしかして、昔本で読んだことのある現象かもしれない。
…でも、できれば違ってほしくて。
「…うん、」
宮田は言い辛そうに視線を泳がせると、玉の髪を撫でながら口を開いた。
「…白い服着てて、顔とか体に白いペイントみたいなのしてて……背中に、傷がある。今も」
違ってほしいと願っていたワードが、次々と出て来る。
藤ヶ谷が俺の様子を見ながら、玉の服を脱がせて背中を見せてくれた。
包帯とガーゼを取ると見えた傷は、もう泣きたくなるぐらい予想通りの位置にふたつ。
「…玉も“永遠の白”に選ばれたのか…」
白い衣装に、白い顔化粧、さらにこの傷の位置。
理由はわからないけど…誰かが、玉の翼を引っこ抜いたんだ。
「誰だよ、なんてひどいこと…っ」
思わず涙が溢れてきた。
翼は神経が鈍いから、俺みたいに翼だけ無くなればまだ…痛みも無かったのに。
引っこ抜いたら、身体に備わっている知識や情報が、そのまま翼と一緒に抜け出てしまう事があるらしい。
玉の場合、それが言語の理解だったんだ。
「みつ？…もしもし」
俺の涙を拭いながら、玉は大好きな笑顔で抱きついてくる。
その愛らしさにまた涙が溢れて、細い身体をぎゅっと抱き返した。
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愛 - 初めまして。ひっそりファンで何度も作品を読み返している者です。すぐ引き込まれて読むのがいつも楽しいです。題材材料となる専門的知識がすごいですね。しっかり勉強熟読して作品にされてるからファンタジーでも抵抗無く読めるのだと思います。更新嬉しかったです。 (2020年12月7日 14時) (
レス) id: 86cd2f1e13 (このIDを非表示/違反報告)
nanaco(プロフ) - こんばんは(TT) おまけのお話、すごく大切に読ませて頂きました……図々しくもSNSで作品名を出させて頂いた者です(；ω；) 作品の世界にどっぷりとハマり数日間余韻が抜けなくて^^; がじゃいも…の台詞のところで涙腺やられました(TT) 本当に大好きな作品です… (2020年12月6日 0時) (レス) id: a7b3edb10a (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - シンプルにすばらしいです…なきました (2019年8月28日 17時) (レス) id: f95f9b47d8 (このIDを非表示/違反報告)
なぁ(プロフ) - はじめまして。読み始めたら止まらなくて一気に読んでしまいました。まっしろたまちゃんかわいいし可哀想だし読みながら号泣してしまいました…！素敵なお話ありがとうございました！谷森山さんの他のお話も読ませていただこうと思います (2017年6月20日 1時) (レス) id: 6204cccf27 (このIDを非表示/違反報告)
谷森山(プロフ) - ひよさん» はじめまして。お返事遅れまして申し訳ありません！最後までお付き合いくださりありがとうございました！ご満足いただける作品になっているようで安心いたしました！たまちゃんは永遠の天使です(ﾄﾞﾔｧ)他作品でも、またよろしくお願いしますね(*^^*) (2017年6月6日 18時) (レス) id: 9b9168131d (このIDを非表示/違反報告)
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