もしもし、あなた

14*Ki ページ14

儀式を行うのは、ひっそりとした教会の中。

天使の国は人間界を真似た建物が多い。

べつに性別も無い天使が教会で結婚するわけでもないし、何かの宗教があるわけでもない。

でもなんとなく、神秘的な雰囲気のする教会は好きだった。


『○△◎★◆♪☆※…』

(…なにが“天界の象徴と言える白になる覚悟はあるか”だよ。有無を言わさず俺を像にするくせに)


牧師の真似事をする天使の羽根も、青。

ちょっと地位の高い天使が集まっている場所は、なんとも翼がカラフルで面白い。

一般の天使たちが立ち見している中に、玉は泣きながら立っていた。

安心させたくて、余裕の笑みで台上に立つ。


その時だった。




『Hey!!!』



勢いよく教会の扉が開き、翼の無い…白い軍団が乗り込んできた。

白い長髪、白い衣装に、白い刺青。

顔が白黒半分に分かれた奴も居た。

そいつらはあっという間に俺を囲い、奇妙な動きで俺の翼に触れる。


『feeling so alive?』

『…は、』


何？って、聞こうとした。

それより前に、奴らの手に触れられた翼は…みるみる溶け始めた。


『…ぅ、わぁあ！？』


教会はパニックだ。

俺はもう訳が分からなすぎて、どんどん無くなっていく自分の翼の感触をただ呆然と見つめていた。


『みつ！！』


気付けば玉が、俺の手を引いて走っていた。

白い奴らは追ってきたけど、国の回り道を知り尽くす玉は次々と細い道へ入り込む。

追ってくる奴らが居なくなると、玉は我慢していたのかボロボロに泣きながら俺の背中に触れた。


『あぁっ…ひどい、あんなに…きれいだったのに…っ』


不思議と痛みはなかった。

ちょっと無理な体制をしながら背中を触ってみれば、いつも感じていたふわふわする羽根はどこにも無い。

…あぁ、本当に…無くなってしまったのか。


『feeling so alive?』


『みつ！？ぅわっ』

『玉！』


突然背後に白い奴が現れて、俺たちは簡単に捕らえられた。

玉を助けたくて腕を伸ばしたけど、それは届かなくて。

俺を捕らえてる奴は片手間に、足元に手をかざす。

それは地面を割り、雲を裂いて…遠くに人間界が見えた。


『…え、っ』


まさか、と思うよりも先に。



『みつ！！』



俺はそこへ投げ込まれていた。

玉の叫ぶ声がどんどん遠ざかり、翼の無い体はどんどん人間界に近くなる。


『…あ』


やがて原っぱに身体が叩きつけられて、視界は緑でいっぱいになる。

衝撃が強すぎたのか、俺の意識はそこで途絶えた。

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