聖夜の短編集

ｸﾘｽﾏｽももふもふ日誌！4*Y ページ4

ｼｬﾝｼｬﾝｼｬﾝ…


「えっ？」


ｼｬﾝｼｬﾝｼｬﾝ…


「…何の音？」



ｼｬﾝｼｬﾝｼｬﾝ…



微かに聞こえてくる鈴の音。

みんながｷｮﾛｷｮﾛする中、みつは一目散に窓へ駆け出した。






『あっ！さんたさん！』




みつの一言に、全員が窓へ駆け寄る。

窓の外はちらちらと雪が舞っていて、それでも大きな満月がｷﾗｷﾗと輝いている。


…その満月を、ふと影が通り過ぎた。



『さんたさん！さんたさんだ！』

『ほんとだっ！すげぇ！』

「すげぇー！ﾆｶ、ｻﾝﾀさんだよ！」

「やべ、本物じゃん！写ﾒ写ﾒ！」


ﾆｶは慌てて携帯を取り出すと、ｶﾒﾗﾚﾝｽﾞを窓に向けて首を傾げた。


「…あれっ？」


その声に全員はﾆｶを一瞬振り返り、また窓の外へ向き直ると…



「…いない……」


確かに見えていたｻﾝﾀｸﾛｰｽが、どこにも居なかった。

みんなはﾎﾟｶﾝと口を開けて固まる。


「……ｻﾝﾀｸﾛｰｽ…」


小さく呟いた太輔。

その言葉に、みんなはぐっと息を呑んだ。



『…すげぇ…ほんとに、さんたさん…』

「みんな、いい子にしてたからだね」

『どうせなら、おはなししたかったなぁ…』

「充分じゃん。ｻﾝﾀさんも、みんなに会いたかったんだよ」


ゆっくりとたまの頭を撫でる宮田。

健永がみつに笑いかけると、たいすけがぽつりと呟いた。


『…らいねんまた、あえるかなぁ』


未だ窓にへばりつくたいすけに、宏光は小さく笑いかける。


「いい子にしてたら、きっと会いに来てくれるよ。…今日のことは、思い出にしっかり残しておこう。滅多に会えないｻﾝﾀさんが、わざわざ会いに来てくれたんだからさ」


その言葉に、全員がゆっくり頷いた。

…俺はまだ、状況が把握出来てないんだけど。


「…渉」

「太輔…今のって…」


ﾎﾟｶﾝとする俺を余所に、みんなは既にはしゃいで遊び始めてる。

太輔は満月を眺めて、静かに口を開いた。


「うん、ｻﾝﾀｸﾛｰｽだよね。…俺も目を疑ったけど…この子たちの純粋な夢見る気持ち、ｻﾝﾀさんも蔑ろにはできなかったんじゃない？」


豪華な料理より、美味しいｹｰｷより、

高価な贈り物より、綺麗な景色より…


一番大切な、素敵な一瞬。


ｻﾝﾀｸﾛｰｽがﾌﾟﾚｾﾞﾝﾄしてくれたその一瞬を、ここにいる全員で共有できたこと。



(…ﾒﾘｰｸﾘｽﾏｽ、ｻﾝﾀさん…)



それが俺にとって、何より嬉しい贈り物だったのかもしれない。





20151224 Merry Xmas!

ｻﾝﾀさんにも“おかえり”を1*F→←ｸﾘｽﾏｽももふもふ日誌！3*Y

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す