“ただいま”のぬくもりを

男として！3*F ページ27

猛ﾀﾞｯｼｭで飛び込んだ玄関。

家の中は静かで、さっきまであんなに泣き叫んでいたふたりはどうしたのかと血の気が引く。

慌ててﾘﾋﾞﾝｸﾞへ入ると、誰も居ない。


「…母さん！」


父さんの部屋にも、風呂場にも、ﾄｲﾚにも居ない。

…二階に居るのか？


「ひろっ！！」


階段を駆け上って、俺の部屋、渉の部屋、高嗣と健永の部屋も見たけど…居ない。

あとは、母さんとひろの部屋。

ふたりの部屋へ駆けていくと、ﾄﾞｱの向こうから微かに泣き声が聞こえた。


「ふぇ…っ、たぃちゃ…っ」

「ひろ…！」


勢いよくﾄﾞｱを開けたら、ふたりはﾋﾞｸﾘと肩を跳ね上げて振り返った。

ﾍﾞｯﾄﾞの上に、ひろを抱えながら座り込む母さん。


「母さん…っ」

「太輔…っ！」

「たいちゃぁああぁぁ！」


ひろは俺を見つけると、両手を伸ばしながらよちよち走ってきた。

それを抱き上げて背中をﾄﾝﾄﾝしてやると、ひろはぎゅっと俺の肩にしがみついて泣きじゃくる。


「母さん、大丈夫！？どうしたの？」

「た、太輔…あれ…っ」


座り込む母さんに駆け寄って、弱々しく指差された方を振り向く。








「………くも」





小指の爪の半分くらいの大きさ。

壁をちまちま歩く、蜘蛛。


…目が点になるとはこの事だ。



「ぎゃーーーー！！！」



わずか三秒で、脚をつまんで窓を開けて外に投げて窓を閉めた。

その経緯に驚いたのか、母さんとひろはお互いに悲鳴を上げてしっかり抱き合っている。


「うぇえ〜ん、太輔ありがとう〜…」

「たいちゃ〜！」

「はは、どういたしまして…」

「ただいま。…みんな揃ってどうしたの？」

「あ、渉おかえり〜」


(…嗚呼、俺じゃなくても…この時間に渉が帰って来たんじゃん…)


ひょっこり顔をのぞかせた渉。

蜘蛛の話を母さんから聞くと、何かを察して俺を哀れな目で見つめてきた。


(…き、北山ぁ〜…)


今度はちゃんと雰囲気を作って、誰にも邪魔されないように携帯を切っておかないと。

窓の外に放り投げた、もうどこに行ったかもわからない蜘蛛を睨みつけて、ちょっぴり悲しくなった。






***


ざまぁみろ〜。

中学生で色気づいてるから天罰が下ったのじゃ〜。


…なんて思いながら書いてました最低です。


谷森山家は父しか男が居ないので、虫が出たらまず父です。


今度北山さんといい雰囲気になれる日は来るんでしょうかね？

来たらまたぶち壊すのみです、楽しみですね。


20160122 谷森山

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