“ただいま”のぬくもりを

男として！1*F ページ25

「じゃ、また月曜日」

「あ、ちょ…待っ！」


金曜日の放課後。

いつも通り北山を家まで送り届けて、帰路に着こうとする。

土日はふたりとも部活があって会えない事が多いのが寂しいけど、大会間近だから仕方ない。

明日も午後から部活だから…と、名残惜しくも踵を返す俺の腕を、北山は控えめに掴んだ。


「…北山？」

「…あ、あの…今日、母さん帰ってくるの…夜遅くて…」


(…ま、まさか…)


「ひとりで家に居たくないから…少しだけ上がってってくんね？」






“心拍早すぎなう”

知らない間に俺たちの周りでできていた、“太輔とみつを応援する会”のｸﾞﾙｰﾌﾟﾗｲﾝ。

俺の飛ばしたﾗｲﾝはすぐに何件か既読がついて、“おぉ！”“やったね！”“がんばれ！”など次々に返事が来た。

北山はお茶を淹れに行ってて、その間に俺はどうしたらいいのか助け舟が欲しくて。


“男ならちゃんと決めなよ、太輔”


そんなかっこいい事言われても…！

き、決めるって…決めるって…！！！


「…どうかした？」

「えっいや！あの、だ…大丈夫」


結局何のﾋﾝﾄも得られず、北山はお盆にお茶とお茶請けを持って戻ってきた。

ﾏﾝｼｮﾝの一室、いつも北山が寝ているﾍﾞｯﾄﾞを背に、ふたりっきりで…。


(…そういえば俺たち、まだ何も進展してない…)


気持ちを伝え合っただけで、ｷｽはおろか手も繋いでない。

北山があまり周りから目立ったｶｯﾌﾟﾙになりたくないみたいだから、学校では普通だし。

帰り道も他愛ない話するぐらいで、手とか意識したことなかった。

よし、まずは順を追って…北山の手を握ってみよう。


「…北山」

「ん？」

「あ…えっと…」

「なんだよ(笑)」

「…な、なんでもない…」

「？変なの」


…むり。

緊張で手汗やばい。

いま手なんか握ったら気持ち悪がられる。

それに、面と向かって北山を見たら…可愛いんだって！！

余計に緊張しちゃって、手繋ぐのってこんな大ｲﾍﾞﾝﾄなのかってぐらい。


「…どうした？顔色悪くね？」

「えっ、そんなこと…」

「熱ないか？」

「ない……」


俺の返事を待たずに、額に柔らかい掌が触れる。

北山は自分の額と俺の額の熱を比べているみたい。


(…北山の方が男らしい…)


このﾀｲﾐﾝｸﾞで、手を握ってみようか…

なんて思ってたら、ふと携帯の画面に視線が行く。

ちょうどいま来たﾗｲﾝの文章が、そのまま画面に出ていた。


“いいぞ太輔、押し倒せ！”


(…おし…！？)

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