“ただいま”のぬくもりを

思い出は百日紅*M ページ22

「ちょ、待っ…ｽﾄｯﾌﾟ！！」


慌てながら俺に背を向けた玉。

言われたとおり立ち止まれば、月明かりに照らされた綺麗な背中が見えて鼓動が高鳴る。


「…なに？」

「や、その…わ、私…服着てないから…っ」


ふと視界の端に映る茂みに、玉の衣服とﾀｵﾙを見つけた。

きれいに折り畳まれた服が、玉らしい。


…でも、俺はその肌に触れたい。



「きゃっ…！？」

「…うん、ごめん。…なるべく見ないようにするから…」



我慢できずに、背中から優しく抱きしめた。

滑らかな背中の感触が、ﾀﾞｲﾚｸﾄに俺の胸板に触れる。

想像してたよりももっと、柔らかくてすべすべした肌。


「み、宮田…？」


濡れた髪をそっと撫でて、優しく肩を掴んで体を反転させた。

頬を染めてこちらを向いた玉が、瞳を揺らしながら俺を見上げてくる。


(…すっ、げー破壊力…)


今度は正面から抱きしめると、普段では感じることの出来ない胸の柔らかさが俺の鳩尾に触れる。

小さく跳ねた肩がいじらしくて…



「…目、閉じて」


耳元で囁いた言葉に、いつもの玉からは想像もつかないような素直さで目を閉じた。

…玉も、このｼｰﾝに高揚してくれてるのかもしれない。



大きな満月と、星の輝きに照らされた玉。


ぷっくりと膨らむ濡れた唇に…そっと口付けた。









「…それって、勢いと雰囲気でｷｽしたってこと？」

「太輔、言葉選べって」

「…はは、まぁ…そうなるかもね」


今まで静かに聞いていたふたりの息子は、俺と奥さんのﾌｧｰｽﾄｷｽに盛大なﾂｯｺﾐを入れた。



あのｷｽをしてから、部屋に戻っても興奮覚めやらぬまま…

…興奮しすぎて、俺はﾐｽをしたんだけど。


でもそれで産まれてきてくれたのが渉、だなんて。

言ったら驚くかな？



「さ、思い出話はここまでにして。ふたりとも宿題終わらせた？」

「「……ｵﾜﾗｾﾀ…」」

「はい、嘘〜。はい、やって来なさ〜い」

「え、続きは！？」

「宿題終わらせたらね。気になるなら、さっさと終わらせること！」

「「…は〜い…」」


渋々部屋を出たふたり。

ﾘﾋﾞﾝｸﾞで、ひろが太輔に甘える声がする。


「…ね、どこまで話したの？」

「ん〜？月の中でｷｽした所まで」


心配そうに入ってきた奥さん。

子供に悪影響だと思ってたらしくて、ｷｽまでなら…と安心したみたい。


「…玉、おいで」

「はいはい」


あの後相当な苦労があった事、今はまだ…子供たちは知らなくていいよね。

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