“ただいま”のぬくもりを

何年経っても…*Y ページ14

朝起きて、着替えて、顔を洗って、一階のﾘﾋﾞﾝｸﾞへ向かう。

まだ布団の暖かみが残る体に、朝の空気は少しだけ冷たい。


「おは…」


既に起きている両親に声をかけようとして…止まる。

ふとｶﾚﾝﾀﾞｰを見れば、今日は11月22日。


(…あー、そっか…)


ひとりで納得してたら高嗣と健永が起きてきて、ふたりが騒がないように人差し指を口の前で立てた。


「わったー？何してんの？」

「わた兄おはよう〜」

「ん、おはよ。ふたりとも、今日は11月22日だから…」

「「…あー、そっか…」」


こっそり両親にばれないようﾘﾋﾞﾝｸﾞを覗くふたり。

俺も覗こうかと思ってたら、のそのそと太輔がひろを抱えて起きてきた。


「太輔、ひろ、おはよ」

「おはよ。みんな何してんの？」

「たい兄、今日は11月22日だよ！」

「…あー、そっか…」

「たいちゃ…？まま…」

「ひろ。いい子だからちょっと待ってね」


太輔はひろの顔中にｷｽを落として、ﾘﾋﾞﾝｸﾞを覗き込む。

後に続いて俺もこっそり覗くと、毎年恒例の幸せな光景が目に入った。





「…これから先も、ずっと…愛してるよ」

「…ん、しってる」

「玉は？俺のこと好き？」

「…好きじゃなかったら、お前の苗字になってない」

「ふふ。…ありがと」


ふたりは少し照れくさそうに微笑み合い、結婚指輪のついた左手同士を絡めた。

手を握ってるだけなのに、どうしてこんなに感動的なんだろうな…。


「ままぁ…」

「あらら、ひろいつのまに泣いちゃったの？…ふふ、俺も最初見た時は泣いたなぁ…」

「ひろちゃんは初めて見るの？あのね、今日はﾏﾏとﾊﾟﾊﾟが結婚式を挙げた日なんだよ」


太輔の腕の中で静かに涙を流すひろ。

優しく健永が教えてあげてるけど、結婚式とか言ってもひろわかんないだろうな。


「わったー、玉ってなに？」

「母さんの旧姓。玉森だったから。…母さん16で俺産んで、それから結婚式だったから…ふたり、苦労してると思うよ」


俺が物心ついた時から毎年欠かさず、この日は朝ふたりで指輪を合わせている。

俺たちが幸せに暮らせているのは、ふたりがこうして支えてくれるから。

だから毎年この光景を見ても、いつも感動してしまうんだ。




「…はい、終わり！そこ！こっそり見てないで学校の準備！鼻も仕事遅れるぞ！」



ものの1分でいつもの母さんに戻ってしまうけど。

密かに1年の間で楽しみにしている行事のひとつ。

来年からは、ひろも楽しみになるのかな？(笑)

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