ないものねだり7*F ページ12
勢いのまま飛び出した俺は、北山に触る手を全部払いのけた。
かろうじて腕にシャツを引っ掛けた北山は、拘束が解けるとその場にへたり込んでしまう。
細い体は震えていて、サイズは違うだろうけど俺のカッターシャツを肩から羽織らせた。
「太輔じゃん。お前なんなの?邪魔なんだけど」
「なんなのはこっちの台詞だ。北山に何するつもりだったんだよ」
「はぁ〜?何って…ナニ?ぎゃはははは!」
顔を見合わせて笑うそいつらを、思い切り睨み上げた。
…嗚呼、菜子ちゃん。
俺いますっごい真剣に睨んでると思うよ。
こいつらの顔が、テスト用紙に見えるもん。
「ふざけんな。とにかく…北山には手を出すな」
「…お前まじ意味わかんねぇんだけど。なに、北山のこと好きなわけ?」
「そうだよ。だから、好きな女には手を出させたくねぇんだよ」
あまりにもスラッと出てきた言葉に、そいつらも北山も…俺も驚いた。
「ちっ。…つまんね。行こうぜ」
ぞろぞろと去っていくそいつら。
とりあえず殴られず済んだ事にホッとしてから、北山の前にしゃがみこんだ。
「…北山、大丈夫?」
北山は俺のシャツを両手で握りしめながら、細い肩を震わせた。
俯いていた顔をゆっくり上げると、大きな瞳から一粒の涙が溢れる。
「おま…なに、して…っ」
「…北山が遅かったから、迎えにきた。……それと、昨日は…」
言いかけた俺の肩口に、北山の額が埋まる。
あまりに突然の出来事で、息が止まるかと思った。
「…昨日は、ごめん。…お前、あいつらと一緒に馬鹿やってたんじゃないんだろ?…誤解して、最低なんて言って……ごめん」
「…いや、あの子を助けられなかったんだから、馬鹿やってたのと一緒だよ。…俺も、ごめんね」
一番言いたかった事を伝えると、北山は顔を上げて少しだけ笑った。
頬を染めた涙目が…ダイレクトに鼓動を速くする。
「…ふふ。それにしてもさっきの、ちょっとかっこよかった」
「…さっきの?」
「うん、好きな女には…とかっていうの。助ける為の嘘だったにしても、ちょっとキュンとするな。ああいうの」
…北山が、俺に…キュンとしてくれたの?
「…嘘じゃない」
「えっ?…わっ」
居ても立ってもいられなくて、思わず抱きしめてしまう。
…嘘なんかじゃない。
俺は…
「…北山、好きだよ。…だからあいつらには、まじで北山に触れて欲しくなかった」
可愛い耳元が、みるみるうちに赤く染まっていった。
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谷森山(プロフ) - たみさん» もうおたまママからしたら、「えっ?太輔みっちゃんと結婚するんだよね?」の勢いですね笑 続編もちまちま作成していますので、そちらもお付き合いくださいますと嬉しいです〜(*^^*)お願いいたします(^o^) (2016年5月16日 13時) (レス) id: 2433512750 (このIDを非表示/違反報告)
たみ(プロフ) - 甘々カップルエピソードも気になります!w ドキドキしてるたいぴーかわいいです。これからも楽しみに読ませていただきます。ファミリー大好きです。 (2016年5月4日 18時) (レス) id: ab325a56e8 (このIDを非表示/違反報告)
谷森山(プロフ) - (・8・)さん» ご感想ありがとうございます(*^^*)!なんとお兄様と読んでくださって!?光栄です(∩´∀`∩)優しいお兄様なのですね、私もほっこりしました(*^^*)よければ今後のお話も、お付き合いくださいますと嬉しいです。 (2016年4月8日 4時) (レス) id: 2433512750 (このIDを非表示/違反報告)
(・8・) - こんにちは!ことりです!私は末っ子でみっちゃんみたいな感じなんですよ…年の離れた兄が4人もいるので、この小説を二番目の兄と見てボロボロ泣きました。親が共働きでほぼと言っていいほど兄にお世話になっているので…この小説で家族の絆が強まりました!! (2016年4月6日 20時) (レス) id: 517f0d7eb3 (このIDを非表示/違反報告)
谷森山(プロフ) - 345さん» ご感想ありがとうございます(*^o^*)おお、お子様がたくさんいらっしゃるのですね。恥ずかしながら私も母に感謝の言葉を述べた事がないので、お話を作りながら色々考えてしまいました(笑)。こちらこそ、素敵なコメントありがとうございました(*^^*) (2016年3月29日 6時) (レス) id: 2433512750 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:谷森山 | 作成日時:2015年11月13日 1時