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Prologue ページ1

「幹部になっても相変わらずか、中也」

彼女は慣れた手付きで遺体の腹部を縫い合わせていく。目にはアイキャップを被せ、化粧を済ませる。その仕事ぶりはそこらのエンバーマーとは格が違うだろう。

「手前こそ、金にならねぇ仕事まだやってたんだな」
「金なら入るさ。案外パーツは良い値で売れる。珍しい目の色とかは特に。君の瞳や髪なら、愛好家(マニア)は軽く数億は出す」

中也は不機嫌そうに彼女を見やった。

「なら、手前もだな」
「冗談は止してくれ。私は誰かのものになる気はないよ」

銀色のショートボブがサラリと揺れた。
黒猫のように黄金色に光る瞳。
長身でモデル顔負けの脚線美を誇るこの女なら、恐らく落ちない男はいないだろう。
彼女の仕事と趣味を知らなければ。

「まだ、下っ端かよ」
「幹部は権威こそあれ、息が詰まりそうだ。私には向かないよ。いい加減私を補佐扱いするのやめてくれないか」
「俺は手前の上司だ」
「君が勝手に私を部下にしたんだろう」

ほら、お別れの時間だよ。

中也はその声に遺体を覗き込んだ。
まるで眠っているようなその姿は、今にも目を覚まして話しかけてきそうだ。

[中原さん!]

勝手に俺を慕って、最前線で死んでいった部下をここで綺麗にして貰うのは、一体何回目だろうか。綺麗にする代わりに、その遺体の所有権はこの女に移る。この仕組みは、首領である森が許可したことだった。

「今回は、どうだ」
「きっと高く売れるよ。状態がいいから」

そう言って、女は必ず遺体の頬を撫でるのだ。

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作者名:龍角散が必須な人種 | 作成日時:2019年4月4日 13時

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