【ゴールデンカムイ】兵器な彼女【尾形百之助】

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1話。ページ1

Aside

二百三高地。
血と大量の弾を浴びながら走り続けたあのとき。
戦争の愚かさを知った。人を殺してまでも領土を奪い合う意味が分からなかった。

そんな壮絶な戦いからしばらく経って、私はまぁそれなりに兵士をやっていた。戦争もなく、やることと言えば本拠地の護衛や街の見廻りくらい。
これくらいがちょうど良いのかもしれない。
武器を取る必要がないのは素晴らしい。たまに女郎屋の喧嘩を収め、お礼にと蕎麦をごちそうになる。良い生活だ。理想的だ。

｢A、話がある。｣

ぼーっと階段の踊り場で外を眺めてそんなことを考えていると、尾形上等兵に声をかけられた。はっとしてすぐ姿勢を正すと、彼と目があう。深い黒に吸い込まれてしまいそうなほど、彼の目は不思議な魅力がある。

彼は私の顔を見るなりついてこい、という意味であごをクイッとしゃくり、階段を登って行った。
彼はついこの間川に落ち、怪我をして安静を言い渡されている最中だった。それなのに、わざわざ私のところまできた。よっぽど大事な話なんだろう。

尾形上等兵の部屋へ案内される。私が入るなり、ドアの鍵をかけて椅子へ座る。私が突っ立ったままでいると、そこに座れ、とベッドを指さしたので、ありがたく腰掛けさせて貰うことにした。

『尾形上等兵、お言葉ですがしばらく安静のはずでは？私にお話とはなんでしょう』

私がそう言うと、彼は意味深な笑いを落とし立ち上がった。そのまま私の横に経つと、私の肩を掴みながら耳元で小さく、けれどはっきりとこう言ったのだ。

｢...もしも俺が鶴見中尉を裏切ると言ったらどうする？｣

はっとして彼の顔を見る。
そんな、短い言葉では全く何を考えているのかわからない。

私にカマをかけているのか？

驚いて立ち上がろうとしたが、がっしり肩を抑えられているため身動きが取れなかった。
私も鍛えてるはずなのに。いくら入院で動いていなかろうと、男の彼には敵わないものなのか。

『尾形上等兵、何を言っているのか分から｢直感で言え。何を言ったところで俺はお前に対して何もしない｣......』

『私はあなたに助けられました。私が忠誠を誓ったのは、鶴見中尉ではなくあなただ。いつまでもあなたについて行きます。』

そう言うと、彼は私の帽子を取って頭をわしゃわしゃ撫でた。

｢お前は本当に、かわいい奴だよ。まるで躾られた忠犬だ。｣

『あなたの忠犬なら願ったり叶ったりです、ご主人様』