昨日の約束

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時が経つのは早いもので。
再会した日から何度か待ち伏せをしても、あれから藤ヶ谷と偶然に会うことはできなかった。

部屋にいるのかもわからない。
薄い壁のくせに、物音ひとつしない。


本当に、生きてるのかよ。
少し心配になり、チャイムを押してみても反応しないことが続いた。


いよいよ不安になってきて、またどこかに行ってしまったらどうしよう。それか、何か事件に巻き込まれてしまったのではないか…警察に通報しようとした、4月。
夜遅くガタッと音が聞こえた後、足音が聞こえた。


その音に･･･どこか安心する。
そりゃ、そうだ。
もし同じ大学なら、
明日は彼はきっと入学式だ。
いるに決まってる。
入学式は何日かあるけど、昨日も今日も気配なかったから。
"そこ"とは言っていたけど、この辺他にもなくもないし、見るまでは同じか心配だった。


学部によって入学式の時間も日程も違う。
だからとりあえず朝早く起きて、足音を聞いて様子を伺い自然と同じタイミングで家を出よう。


うん。それがいい。


今日は久しぶりにバイトもなかったから、
ゆっくりその音を聞いて安心したのか久しぶりに安眠できた。



・・・苦手な朝。
なんとかアラームのおかげで起床し、隣の壁に耳を傾ける。
隣りからは音が聞こえない。もしかして、もう行ってしまったとか！？焦りから冷や汗が吹き出る。



そのまま俺はスマホを触ったり外を覗いてみたり時間を潰した。
そんな時、やっと昼前にバタバタと小さな足音が聞こえてきた。その頃には気持ち悪いくらい準備満タンな自分。玄関で待ち構える。



数十分後隣りのドアが開く音が聞こえた。
自分もゆっくり玄関のドアを開けていく。



･･･おしっ！！！


タイミングがバッチリで藤ヶ谷がドアの鍵を閉めていた。


何気なく、何気なく。
自分も鍵を閉める。


「おう。おはよ」
「おはよ」


･･･さり気なく言えたかな？
不自然じゃなかったかな？


声、上擦ってなかったかな？


藤ヶ谷も普通に返してくれたから、多分大丈夫なんだろうけど。


あの日、キスしようとしたよな？


･･･そんなこと聞けねーけど。。



「あっ・・･･･て、おい！」
「何？」


一人でツッコミを入れていると、隣りにはもう藤ヶ谷がいなくて、廊下を歩いていた。
それを追いかける。


藤ヶ谷は爽やかなのに。色気がダダ漏れだった。
胸が苦しくなる。ただ笑ってバカやっていた･･･


あの頃の藤ヶ谷とは違う。

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