昨日の約束

おまけ F ページ41

隣に北山が眠っている。
狭いマットレスの上で、薄いシーツにくるまって。
綺麗だけど少し焼けている小麦色の肌。
自分と似ている肌色に嬉しくなる。なのに、なんでだろう。北山の肌には透明感がある。
可愛くて可愛くて仕方ない。
儚い寝顔。
ぷくっとした頬っぺに半開きの唇。
可愛さと色気を持ち合わせてる彼に、心臓は早まるばかりで。


先程の情事を思い出すと顔まで熱くなる。
痛がり涙目になりながらも、"ひとつになりたい"そう訴えかけてくる北山に抑えることなど出来なくて。自分も初めてで。慣れないながらも残念ながら欲望のまま･･･致してしまった。


それでも、"嬉しい。幸せ"そう言うお前に、もう、なんて言うか。
可愛すぎて誰かに連れ去られてしまい奪われてしまうんじゃないかと不安になるぐらい。
タマのこと、尊敬するわ。
こんなに近くにこの子といて、我慢できていたタマのことを。
だからタマとの約束を守ったのもある。


その約束のせいで北山を傷つけてしまったけど。


でも、ちゃんと伝えてくれた。




「・・・んー、藤ヶ谷」


寝言？むにゃむにゃ言いながらニヤニヤしている北山。オレの夢でも見てくれてるのかな？
嬉しくて。北山の前髪を撫でておでこを出すとおでこにキスをした。



「･･･にく、ん。にくうまい」
「･･････」


唇を離すと聞こえてきた、声。
何？オレの夢も肉の夢も見てんの！？


どんなに、肉を愛してんの！？



「んー、にくのがすきぃ･･･」


は！？
どういうこと！？



オレより肉のが好きなの！？
な、なんで！？
ってか同じフィールド！？
オレと肉って同じステージなの！？



「･･･かわいい」


恋は盲目とは言うけど。
その通りだと想う。そんなとこも可愛いと思ってしまうなんて。



家族と離れ日本にオレだけが戻ると決まった時、父親はセキュリティがしっかりしているマンションを会社の人に頼んで手配しようとしてくれた。


でもオレがそれを断って、父親を説得して。北山のお母さんに北山の大学と住所を聞いて、一年かかって勉強して受験して。かなり前から問い合わせし予約していた隣の部屋に入室できることになった。


北山の言う隣のお兄さんは偶然、父親が勤めてる会社の入社試験を受けた。そこまで調べあげ、父親に頼み採用するよう働きかけた。
お兄さんは知らないかもしれないけど、軽いコネ入社だ。


そうすれば引き続きあのアパートに住む必要もなくなり出ていく。

すべて目論んだままになった。

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