昨日の約束

38 ページ38

今日は曇り。太陽は雲によって隠れている。
陽射しは少ないけどこの時期はジリジリと肌にくる。

彼女が座る。その横に距離を置いて座る。


「あおい まおと申します。急にすみません」
「･･･えっ、？」
「どうされました？」
「いや･･･」


"あおい"って、苗字！？
まず、そんな些細なことから驚く自分。
てっきり…名前かと。


「･･･あおいさん、どうして俺の名前.....」
「藤ヶ谷くんに聞いたんです」


藤ヶ谷、話してたんだ。
2回も会ったんだから、話すか、名前ぐらい。


「そうですか･･･」


女子と話すことに慣れてないので、年下でも敬語になってしまう俺。


「私、実は…藤ヶ谷くんが好きなんです」
「え、」


何、イキナリ！？相談ー･･･！？
でも、好きなんだと言われても。逆に宣戦布告？
彼女の横顔はどこか深刻そうで。でも、とこか吹っ切れているような横顔だった。


「好きも何も･･･付き合ってんでしょ？」
「いえ！全然！私、振られてますもん！」
「は？」
「清々するぐらい。爽やかに」
「え！？付き合ってるんじゃ･･･」
「じゃあ･･･北山さんも知らないんですね」
「え？何を？」
「ただ、知りたかったんです。あんなに素敵な人が誰をあんなにも想っているのか。一目拝みたかったというか」
「･･･どういうこと？ごめん。話が見えない」


ひとりで話を進めていくあおいさんについていけない。
誰をあんなに想っているのか？
一目拝みたかった？


「藤ヶ谷くん。好きな人を追いかけてこの大学に入ったんですよね？待たせてる人のために。約束を果たすために。ここに来たんですよね？」
「･･････え、」
「すごーく素敵じゃないですか？あんなに完璧な人が一途に、想う相手。あー気になる！拝みたい！勉強させてほしい！」


･･･さすが理系女子。勉強家･･･。
いやいや、そんなんじゃなくて。


それって…


「でも、あおいさん入学式の日に藤ヶ谷のアパートに行ったよね？階段ですれ違ったじゃん」
「あー、あれですか？」
「二人で部屋ってことは、その･･･」
「あれは、二人じゃないですよ？」
「え！？」
「入学式の時に仲良くなった今のグループの子達も部屋にいたんです。もちろん男の子も。私の門限が厳しいので･･･藤ヶ谷くんが駅まで送ってくれることになってたんですけど」
「･･･けど？」
「北山さんたちに会ったあと、すぐタクシー見つけて押し込まれちゃいました」


てへっと笑う彼女。
･･なんて可愛いんだろう。

39→←37

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す