昨日の約束

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今度は玉森に引っ張られ藤ヶ谷の腕の中から引き剥がされる。


藤ヶ谷･･･


何で、抱きしめたの？
何でここにいるの？
さっきの子はいいの？
この腕は、何？


玉森･･･


ずっとそばにいてくれたのは、玉森だった。
藤ヶ谷をずっと待ってた俺を元気づけてくれてたのは…玉森だった。


藤ヶ谷の気持ちがわからない。


遊びかもしれない。
女の子が本命で。
久しぶりにあった俺をからかいたかったのかもしれない。


それに･･･ずっとそばにいてくれていた玉森の手を振り払うことは出来ない。


藤ヶ谷が好きでも。


"北山、最近元気なくね？"
"んー、ちょっと"
"リゾートテーマパーク行かない？親に招待券もらったから"
"ふたりで？"
"おう。電車で行こーぜ！"
"うん"


二人で行ったよな。
中一の夏休み。電車に揺られて。
パーク内では耳なんてつけてさ。


"来年の夏も行こうな！"
"また招待券貰ったらな？"


藤ヶ谷が笑って言うから、照れてそう返してしまった俺。本当は自腹でも行きたかったのに。
でも、来年の夏は…藤ヶ谷はもういなかった。


藤ヶ谷がいなくなった日から、元気づけてくれたのは玉森だった。


俺は、玉森を見捨てることなんて、出来ない。
例え気持ちはあげられなくても。
この手を振り払うことは俺には出来ない。



"ミツ、志望校どこだっけ？"
"え、マジ！？そこ難易度高すぎ･･･"
"いや、オレも志望校そこなんだけどね！実は。偶然〜！"



偶然、じゃなかったの？



「タマ、ごめん。タマんちに行かね？」
「ーーーーー！！！！！行こう！」



玉森には俺しかいない。
藤ヶ谷には、あの女の子がいる。


「北山っ！」


玉森の手をとって、階段を降りる。
後ろでは、俺の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。


少し声変わりした声。



「あの頃とは、違うんだよ」


その声に振り向いて、そう言った。
あの頃は手に取るように分かったおまえの気持ち。今はわからない。


あの時の、約束･･･
今はわからない。


藤ヶ谷が好きで。好きで。大好きで。


でも、俺は結局は思い出に恋をしていたのかもしれない。


それさえも、わからない。


だって俺は今のおまえのことを1mmも知らない。
好きな食べ物も。
好きな映画も。
好きな色も。
好きなタイプ･･･も。


何も知らない。


俺の中の藤ヶ谷は
藤ヶ谷の中身は、中学生で止まってる。


そして、おまえの中の俺もきっと中学生で止まってる。


そんなの噛み合うはずがないんだ。

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