Z=43:寂寥 ページ45
ルリ「創始者様の墓標です」
千空「……少し、調べてから戻る」
ルリ「!……では私は先に戻ってますね」
千空「……おい、居んなら出てこい」
「はいよ〜」
ルリの姿が見えなくなったと同時に呼び声がした。素直に出て行くと、神妙な顔つきで、千空は墓石を眺めていた。
「It's a fate,isn't it?」
千空「……かもな」
「まさか百ちゃんが創始者様だったとはねぇ〜随分出世したじゃない。あ、宇宙行った時点でもう十分出世して(千空「A」……」
千空「後ろ向け」
「……はいはい」
背を向けるなり、肩に重みを感じた。逆立った髪がこそばゆいけど、我慢して動きを止める。
「……」
千空「……」
何だか肩周りが温かく湿ってきた。……残念ながら私は、こういう時何をするのがベストなのか知らない。だから、ただ拳をギュッと握って、時が過ぎるのを待った。随分と夜目が利くようになった目で、少し眩しい月を見上げながら。
〈百、ちゃん……?それ俺か?……っははは!!面白ぇ呼び方するなAちゃん〉
〈また家に誰も居ないのかぁ……んじゃラーメン食い行くか!千空呼んでくる〉
〈Aちゃんが悪い奴じゃないって事は、俺も千空も分かってるからな〉
「……せん、く……っ、千空」
口から出た声は、想定外にか細くて、喉を詰めて言い直したけど、多分これは誤魔化せていない。あぁ最悪だ。
次の言葉を紡ぐ前に、千空が顔を上げて袖で目元をぐしぐしと拭った。
なんでかなぁ……百ちゃん、君の前では嘘をつこうと思わなかったのね。私が分からない理由、百ちゃんなら分かる?無理か、だって抜けてるしね百ちゃん。
良い子、で居たかったのかな。有り得ないけど。
千空「A、あいつが遺したおありがてぇ科学土産、存分に使おうじゃねぇか」
「千空、寂しい?」
千空「……」
「……野暮だったね。モーシワケナイ!んじゃ戻ろっか」
あぁ……多分、この気持ちは、"寂しい"、なのかもしれない。久しぶりだなぁ。
Z=44:少女と詐欺師の狭間で流す→←Z=−42:分からなかった
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作者名:すみた先生 | 作成日時:2022年2月26日 21時