88発目 ページ5
「如何にもって感じのとこだな」
『まぁやる側からしたらやっぱりこういう場所が理にかなってるんだろうな』
「ふ〜ん……ま、どこだっていいけどよ金が入んなら」
『行くぞ。しくんなよ』
「はっ、誰に言ってんだか」
ある程度の重さを持ったアタッシュケースを片手に、廃工場に足を踏み入れた。
「ｺﾞﾎｯ……埃まみれじゃねぇか……クソ」
『まぁまぁ。どうせ取引が終わればすぐ帰れるんだから』
ガラッ
『……』
来たな。
「……おい、なんで3人だ。聞いてた話と違うが」
シルエットは確かに3つ。そのうち2つはやけに距離が近い。
「実はこいつが怪我しちゃってさ。ほんとは代理が来るんだけど、どうしても行くって聞かないから」
『……まぁいい。さっさと終わらせよう』
「うん」
一番背の高い男は余裕の笑みを崩しはしなかった。桃色の短髪男は、センター分けの男に支えられながら片足を引き摺っていた。
まさか予想が想定以上に当たるとは……
「はい。これがそっちの欲しいモノ」
銀色のアタッシュケースが開かれ、中にぎっしり詰められた袋を確認した。
こちらも足を踏み出す
『……っと』
「気を付けろよ？金が散らばったら面倒だからな」
『分かってるよ』
ノッポ癖毛の前に立ち、ケースを差し出した。
「……中を見せてくれないと」
ニッコリと微笑んだそいつに、言わずもがな殺意が芽生えた。
『……はいどうぞ』
「FLOW」
「ん……」
フロウと呼ばれた男は私の手からアタッシュケースを気怠げに取った。
「……じゃ。これからもご贔屓に」
「そりゃどーも」
背を向けた3人に息をつきながらも、私の目線と袖口はある一点を捉えていた。
『お気を付けて』
スーツの袖の中で小銃の引き金を引いた。
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作者名：すみた先生 | 作成日時：2021年4月10日 18時
