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「使命……?」
「受け継がれてきたものを守り、次に繋ぐ。それが俺の仕事だ」
「……まさか子供に託すつもりか?」
「俺達大人は子供に託すしかないだろう?善も悪も、過去も未来も。
もし彼らがそれを拒むなら、俺は甘んじて受け入れるさ。それが未来への選択だと信じてるから」
「……あんたは凄いな。俺はそんな覚悟も目標も無いままここまで来ちまったよ」
「ふっ……」
「何が可笑しいんだ?」
「いや。人を救うあんたと、人を殺しさえする俺。こうして話してるのが少し面白くて」
くつくつと喉を鳴らして笑う彼に、ほんの少し顔が熱くなるのを感じた。
「俺だって1人殺したんだ。救うなんて、もう言えねぇよ」
反論のつもりで言ったその言葉に、彼は即座に応答した。
「覚悟があると無いとじゃ、人を殺す意味は大きく変わる。
あんたには無いだろう。また人を殺せるか?人に銃を向けることができるか?
……出来ない人間の方が普通なんだ。あんたはそのままでいい」
柔らかい笑みの中に垣間見えた、覚悟のある人間の威圧感と威厳。
「あんた……友達居ねぇだろ」
「……そうだな。子供の頃から周りには大人しか居なかった」
「sparrowのボスさんよぉ、俺は確かに自分から人を殺すことは出来ねぇチキン野郎だけど……
あんたの友達として話すことは出来るぜ」
40歳の俺なんかよりもずっと若い、30歳の青年らしく、彼は笑った。
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「お前の娘は元気にマフィアやってんぞ」
煙草の火を揺らして、月の無い夜に言葉を吐いた。
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作者名:すみた先生 | 作成日時:2021年4月10日 18時