107発目 ページ24
「……、…っ…ぅ……」
『ふむ……ドクター、ホントに大丈夫なの？結構苦しそうだけど』
汗の浮かぶ額に、ドクターから渡された新しいタオルを乗せる。目を開けないクロは長く息を吐いた。心做しか震えてる気がする。
「珍しいなJACK。患者に興味を持つような奴だったか」
『何言ってんのさ。こっちはクロを無事に帰さないとこの世から永遠のログアウト、そりゃ気にもなるよ』
「そうだったな。……どれ」
ドクターは椅子から立ち上がってベッドまで気だるげに歩く。
「……」
クロの服を捲って傷を診る。そして脈を測ったりして目を閉じた。
『まさかあんたが失敗するはずがない。どうなの』
「脈が速く熱も高い。傷口が少し化膿しかけている」
『死にはしないだろ？』
「まぁ処置をすればすぐ治る」
だが、とドクターは続けた。
「治療に使う薬品が昨日の手術で切れた」
『……マジ？』
「マジだ」
『……』
クロが受けた銃弾は、急所を外したとは言え咄嗟の事で急所のすぐ近くにあった。普通なら油断は出来ないが、ドクターなら大丈夫だと高を括っていた。
これは、私の驕りだったな。
『分かった、責任は取る』
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「で、お使い頼まれたって訳か。傑作だな」
『黙れ』
車に揺られながら闇市を目指す。
本来医薬品は正規ルートででしか手に入れる事が出来ず、尚且つ受け取る側は医師免許を持っている必要がある。ドクターは偽装した免許で上手くやっているが、生憎私はそれを使う事も、新しく作る事も出来ない。何故なら受け取りは対面だし、新たに作るとなったら時間がかかるからだ。
という事で、日用品からヤバいもんまで何でもござれの闇市に行く訳だ。
『言っとくけど、クロが死んだら消されるのは私だけじゃないんだからね』
「わぁってるって。だから車出してんだろ」
決して死ぬのが怖い訳じゃない。ただ、ヘマをしてしょうもない事で殺されるのが癪に障るだけだ。
「着いたぞ」
今日の天気が曇りのせいか、スラム街のような闇市はその奇妙さが増していた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 33人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：すみた先生 | 作成日時：2021年4月10日 18時
