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「すみません！怪我人がいるので助けてくれませんか！」
5歳かそこらの女の子を背中に乗せた、これまた10歳くらいの女の子が声を張り上げて助けを呼んでいた。
声がかなり切羽詰まっていたから渋々治療をしてやった。幸い足首の捻挫と数箇所の擦り傷があっただけだった。
「どこからか落ちたのかな？」
「家の庭で遊んでまして……木から落ちてしまいました」
治療が済んだことで落ち着いたのか……いや、とても子供とは思えない程落ち着いた態度で話す一番年上らしい女の子。だが隣の男の子は泣きそうに顔を歪めて、包帯が巻かれていく女の子の足を見ていた。
「家で遊んでたのにわざわざここに？」
俺がそう聞くと、3人はバツの悪そうな顔をした。そんな時、ずっと黙っていた男の子がおずおずと口を開いた。
「ボ……、父さんと、母さんは出かけてて……その……」
「あぁ。家に誰も居なかったのかな？」
重く頷いた。引っかかることが無かった訳じゃないが、子供の隠し事なんてそう大した事じゃない、と高を括って3人を見送った。家まで車で送ってやろうかと提案したが、落ち着いた女の子がやんわりと断った為だ。
後日。
「先日は娘がお世話になりました」
何やら普通ではない集団が、またしても休診日に押しかけてきた。
黒いスーツに身を包む大人達の脚の間から、ひょっこり顔を出したのは数日前の彼女だった。奥にはあの2人もいた。
「我々はあまり表に出られない職ですので名前は言えませんが、先日の娘の治療のお礼を申し上げに来ました」
「は……ぁ、えぇ……そう、でしたか……」
背が高く、がっしりした体躯の男は、部下(？)にアタッシュケースを出させ、俺に差し出した。
「えっ……！？」
「少ないですが、どうぞ」
少ないどころか、自分が3ヶ月働いて稼げるような額の札束を渡された。
いつの間にかあの集団は居なくなっていて、手元のケースだけが、さっきの事が夢ではないことを示唆していた。
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作者名：すみた先生 | 作成日時：2021年4月10日 18時
