誇りが22つ ページ24
「煉獄家なのに呼吸が違うんですって」
「あそこは代々炎柱を務めてらっしゃるのにねぇ」
「お父様も大変よね」
「あ、姉上……」
『いいんだ千。私が悪いのだから』
「でも姉上は……」
『千。たとえ呼吸が異なっていても、私は煉獄家長女の煉獄嘉柳だ』
あんなことは言われ慣れている。呼吸が違う、柱にはなれない、女だから。言いたい者には言わせておけばいいんだ。
私には味方がいるのだから。
「お前に教えるのはもうやめる」
ある日突然告げられた。父上は酷く冷たい顔をしていた。薄々勘づいてたはいたのだ。だが、いざ正面から言われてしまうとな……
「大丈夫だ嘉柳!お前には才能がある!」
『うん……ありがとう杏寿郎』
天と地の差があるのは理解していた。父上は杏寿郎と千寿郎には教え続けていた。私には家事を覚えさせ、兄弟には剣術を指導した。
私は杏寿郎が苦手だった。明るく、どこまでも真っ直ぐなお前だったから……私に向けてくれた言葉は嘘ではないのだろう、慰めなどではなかったのだろう。それでも、私には辛かったのだ。女だから駄目なのか?父上に認められたい、杏寿郎と対等でありたい。
私の使う呼吸は、他のどの鬼殺隊員も使わない新しい呼吸。どの呼吸から派生したのかすら分からない。父上から習った炎の呼吸は私には合わなかったのだ。3人とは離れた所でただひたすらに木刀を振っていた。どう息をすればいい、どう動けばいい、どう斬ればいい。そんな事を家事の合間に考えていたら自然と出来てしまったのだ。
『父上!私にも呼吸が使えるようになりました!新しい呼吸です、私に合った型も作りました!』
これで父上も認めてくれるだろう。そう思っていたのに。
「なんだそれは。煉獄家は代々炎の呼吸しか使ってこなかったというのに……なんだその訳の分からん呼吸は。地の呼吸だと?
お前は、煉獄家の者ではないのか」
『いえ……私は煉獄家長女です!』
「いや、お前は……」
聞きたくなかった。父上の口から勘当の言葉が出てくるのを見たくなかった。
私はただ、認めて欲しかったのだ。
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作者名:すみた先生 | 作成日時:2020年10月25日 19時