あべこべ君【僕のヒーローアカデミア】【男主】 (ページ31)

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「私が言いたい事は、分かるね？」ページ31

カメラ越しにハッキリと感じた一抹の殺気。マイクを通して聞こえているであろう私の声は震えていないだろうか。余計な威圧をかけていないだろうか。

教師として止めたのではない。明らかにヒーローとして、本能で危険を察知したから、意識せずともマイクを握っていた。

しかし……相澤くんに言われていなかったら、果たして私は気付けたんだろうか。純粋な殺意に。

〈逆の事、特に注意して見てやってください。もし生徒に危害を加えるようなら授業を中止にしても結構です〉

A組、正確には逆少年と関わりを持つ教師陣には告げられている秘密。逆少年が、巷を騒がせているという"あべこべ君"だという事実と、相澤くんが彼の保護者となっているという事。相澤くん曰く、リスクは当然あるが、危険分子をのさばらせるよりはマシだ、との事。また彼を雄英に入れたのは、相澤くんや他のヒーローの目が届く場所に置く事、それから彼に更生を期待する、そんな理由からだった。

「何かあったんですか？オールマイト先生」

飯田少年が律儀に挙手する。

「逆少年が危険行為に及ぼうとしていたからね」

机上の空論……とは言わないが、これは先が長いぜ相澤くん……

「何かあったんですか」

轟少年が不服そうにやって来た。その後ろには尾白少年、葉隠少女、障子少年。そして最後にゆったりとした足取りで顔を顰めながら歩いてきたのは、逆少年。

「私が言いたい事は、分かるね？逆少年」

「分からんなぁ〜僕が勝つ未来があったってのに、それに水を差されてヒジョーに不愉快だ。聞こえるかな、全くもって理解出来ない判断に僕は不服だよ」

ふてぶてしい物言いに皆は言葉が出ないらしいが、それも仕方あるまい。この場で私だけが知っている。彼が、見方を変えれば一種のヴィランであるという事。

「では障子少年に聞こうか。私の判断は妥当ではなかったかい？」

逆少年から視線を外して障子少年を見ると、彼はどこか一点を見つめながら、緩く首を横に振った。そして呟くような声で「正しかったと、思います」と言った。

「勝とうとする事の何が悪いのかが分からない。話を逸らさないでくれるかな」

「私が言っているのはその手段だよ逆少年。勝とうとする事は間違いじゃない。が、君は手段を間違えた。目的の為なら手段を選ばないというのは」

「"ヒーローのする事じゃない"…か。

分かってやるよ。今はね」

……やっぱり骨が折れそうだよ相澤くん。