あべこべ君【僕のヒーローアカデミア】【男主】 (ページ25)

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「やぁおはよう」ページ25

恐らくほとんどの人間が待ち侘びたであろう雄英高校入学式。ガヤガヤとうるさい教室の扉を開けると、既に僕以外の全員が中に居た。

「やぁおはよう」

いくつか知ってる顔を一瞥しては、窓際最後列の席に腰を下ろす。21人か……大方ショータだろう。どうだっていいが、前の席に座る女子が視界の4割を遮って鬱陶しい事この上ない。

教室前方で天パの男の子とボブの女の子、七三分けの男の子が話しているのが見えた。ぼんやりその様子を眺めていたら、彼らの足元に寝袋が転がっている事に気づいた。それがショータのである事に気づくのにさほど時間はかからないのは、僕がその色褪せた黄色を何となく気に入ってるからだろう。

ショータは生徒の驚きなど目にも留めず、どっから出したのか分からない体育着を見せて、グラウンドに集合だと言った。

まーね？自由が売りの校風だってのは聞いてたからそんなにびっくりしないけどさ。入学式もガイダンスも無いってのは、流石特殊学校というところだろうか。

更衣室で着替え、それとなく群れに着いて行く。グラウンドでショータのお言葉を聞き流していると、隣から声をかけられた。

「なぁ、お前入試ん時の奴だよな」

「なんだいねテープくん」

「その…俺ずっと謝りたくてさ。入試の時…嫌な態度だったろ、試験とは言え邪険にしすぎちまった」

目だけ隣に向けて見上げると、申し訳無さそうに首に手を当てる、あの時のテープくんが僕を見ていた。

「僕は謝罪は受け取らない主義なんだ。それに、タイミングとしては頂けないね。センセーが喋ってるだろう？聞く気があるなら、僕に話しかけるのは今じゃないよね。まぁ僕はそれが無いから君と話しているワケだけど？まさか初日から叱られたいドMではあるまいし、前を向きたまえよテープくん」

我ながらドン引きの口調で捲し立てると、テープくんは呆気にとられて、それから僕の言葉通りに視線を前に戻した。彼の後ろ髪を引かれているような居心地の悪い視線は無視だ。

さて、ショータが一頻りスタンスを説明したところで、個性把握テストと称した体力テストが始まった。最下位は除籍と聞こえた瞬間場の空気がガラリと変わったのを俯瞰していると、ショータの目が一瞬僕に向かったのを感じた。

お前も手を抜くなよ。

たった一瞬で、そう言われた気がした。