No.152 ページ2
「ああっ……かわいい」
ひしと木ノ下さんにのしかかるように姉さんがくっついた。
「姉さん、人の彼女に抱きつかないでくれないかな」
「か、のじょって蓮！
あの思春期に女とかまじいらねーしとか言ってた蓮が!?」
「言ってないから」
……似たことは言ったかもしれないけど。
「成長したよな、目黒も。
初めて会ったとき、
こいつアレないのかと思ってた」
姉さんがうんうんと頷く。
「それは姉ながら心配してて……」
「黙ろうか」
「とりあえず木ノ下さん！
末長く蓮のこと、よろしくね！」
「は、はあ……」
他人の玄関で何やってんだと俺は呆れる。
「……まーこれで私も肩の荷がおりた。
安心して結婚できるよ」
「……………え？」
「あれ、目黒。
お前家族から聞いてねえの？
お姉さん来月挙式するって招待状届いてたじゃん」
「……聞いてない」
「あ、あとで木ノ下さんにもあげる。
当日は楽しんでね」
「は、はいっ」
「ちょっ、姉さん！」
姉さんはくるりと俺の方に向き直った。
「心配してくれて、ありがとう蓮。
私、本当にいい弟を持ったと思う。
でも、もう私のことは気にしないでいいよ。
蓮は自分の彼女を大事にしなさい」
姉さんはふっと笑みを浮かべた。
「……今度こそ、幸せになるから」
一瞬、俺は言葉を失う。
掠れた声で「うん」と呟いた。
横から渡辺が顔を出して笑顔を見せる。
「お姉さん、
目黒は大丈夫ですよ。
これでも木ノ下さんにちゃんと惚れてますから」
「……は!?
お前何言ってんだよ」
「そうだね。
心配する必要、なかったかも。
私の弟は人一倍人の気持ちが分かって、
聡い子だから。
信用してるよ、蓮」
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作者名：いちご | 作成日時：2020年2月16日 20時
