No.151 ページ1
「お待たせしました……。
えーと、中に入るの……？」
玄関の扉を開けて顔を出した木ノ下さんは、
戸惑った表情を浮かべていた。
「え、どうする気？」
ちらりと姉さんを見ると、満面の笑みで促してくる。
「………ごめん、木ノ下さん。
入れてもらっていい……」
「あ、はい」
扉を豪快に開いて、
慌てて中からスリッパを取ってきている。
……だから、嫌だったんだ。
恨みがましい視線を送るが、
当の本人は知らんぷりだ。
「二階に妹がいるから、
うるさいかもしれないけど、
……どうぞ」
「イエーイ、木ノ下さんの家入るの初めてだ」
真っ先に入ろうと
でしゃばった渡辺を見て、
木ノ下さんが目を丸くする。
「……ん？
何で渡辺くんが……？」
「目黒のお姉さんとはメル友なんだ」
「へ、へえ……？」
理解できなさそうに返事をしてから、
姉さんと顔を合わせる。
「はじめまして」
会釈をして、
ごくりと息を呑んだ。
「はじめまして、木ノ下さん。
渡辺くんから話は聞いてます。
……蓮が大変ご迷惑をお掛けしたようで……」
いきなり姉さんは深々と頭を下げた。
「ええっ」
木ノ下さんがわたわたと対処に困っている間に
俺は渡辺鋭く睨み付けてから中指を立てた。
ひっと渡辺がおののく。
「いえそんな……
むしろ目黒くんにご迷惑をかけたのは、
私の方というか……」
そのとき姉さんの目が光った
(気がしただけだ、たぶん)。
「……目黒、ですか」
「え!?
あー、れ、蓮くんに……」
眉毛を困ったように下げて赤くなった木ノ下さんは
蚊の鳴くような声で言った。
「……え、何あれ。
姑いじめ的なんじゃなくてただのいじりじゃんか」
「話しかけんな、渡辺」
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作者名：いちご | 作成日時：2020年2月16日 20時
