No.144 ページ44
いや、と目黒くんは呟く。
「間違ってないかも。
俺が気付いたのは、
ほんとに全部終わった後だった。
それに川波さんは確かにあのとき、
向井のことが好きで――。
向井が勘違いした……？
でも、それだと……。
…………もしかしたらあいつ、
無意識に遠慮したのか……？」
「……遠慮？」
目黒くんは一度首を振った。
「……どちらにせよ、俺達が考えることじゃない。
川波さんが決めたことだ。
――それに、他人の恋愛には口を出さない方がうまくいくこともあるよ」
「……確かに、私たちが考えてもどうしようもないか。
康二くんの言い方からしてもう川波さんは
決めたみたいだったし」
「――なら、大丈夫だって」
目黒くんは笑みを溢した。
「……そうだね」
私も頷く。
少し間を開けてから、尋ねた。
「……私も聞いていい？
ずっと、聞きたかったことがあるの」
少し息を吸った。
「――目黒くんが、
この一週間隠してたこと、
……聞いてもいい？
始めは川波さんと康二くんのことかと思ってたけど、
それは、……違うんだよね」
「……気付いて、たんだ」
「遊園地での目黒くんは、凄く辛そうだったから。
――それを見てなかったら、
……気付けなかったと思うけど……」
「――言わなくてごめん。
でも、これは本当に木ノ下さんの弱さとか、
そういうことで隠したんじゃないから。
――俺の問題だから、自分で解決したかったんだ。
でも、言うべきだったかもね。
……心配した？」
「するに決まってるよ……」
目を逸らしてそう言った私に、
目黒くんはふっと口元を緩めた。
「――姉さんが、明日帰ってくるんだ」
え、と小さく声を漏らした。
「――お姉さんが……!?」
「うん、そう。
最初はいきなり過ぎて、
気持ちが追い付かなかったんだけど、
この数日間でようやく気持ちの整理もついたよ。
……あのことも、きっと今なら聞けると思う」
「……大丈夫？」
「大丈夫。
でも、……やっぱり何て言われるか不安だな」
ようやく見せた弱気な表情に、きゅっと心が痛んだ。
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作者名：いちご | 作成日時：2020年2月15日 18時
