No.145 ページ45
……私に、何かできることないかな。
目黒くんを元気づけるために、何かできること――。
――キスしてくれたら教えようかな？――
ぼんと頭が沸騰した。
慌ててかき消す。
な、何でこんなときに
康二くんの変な言葉が出てくるの！
……でも確かに私にできることって、
それくらいしかないかもしれない……。
いや、だからってそういうのは……。
内心で葛藤していると繋いでいる手が目に入った。
恥ずかしそうにそっぽをむいた顔を思い出す。
………それで、少しでも元気になってくれるなら。
私の家の前に着いて、
目黒くんが去ろうとするのを手で引き止める。
不思議そうに私を見る目黒くんの頬に、
背伸びして唇をちょん、とくっつけた。
「…………え」
「……頑張って」
はにかんだ私に、
目黒くんは見てわかるほど赤くなった。
「……そういうことすると
帰したくなくなるんだけど」
ぼそっと呟いた言葉は小さすぎて私には聞こえなくて尋ね返すけれど、
目黒くんはそっぽを向いてしまう。
「何て言ったの？」とめげずに尋ねると、
目黒くんはくるっと振り向いた。
「……ありがとう
――って、言ったんだよ」
少し赤らんだ頬のままそう囁いた。
「じゃあ今度こそ」
「うん、――また月曜日に」
熱を持った自分を持て余しつつ、
「ただいま」と言って扉を開ける――と。
目の前にいた妹がジト目で見てきた。
「――ちょっ、どうしたの!?」
「聞いてない。
彼氏ができたとか」
「……あー」
そういうことか、と納得する。
「しかも、さっきの彼氏、
ないとか言ってた人じゃん」
「見えたの!?」
ぎょっと叫んだ。
妹は冷めた顔で即答する。
「もちろん。
頬のキスまでばっちり」
「うわあー」
頭を抱えた。
羞恥心で妹の顔が見れない。
悶える私の頭の上に、
妹の声が響く。
「……お姉ちゃん。
私が言いたいのはそんなことじゃないんだって。
――もう、大丈夫なの？」
ぴたっと動きを止めた。
頭を上げて、
本気で心配そうにしていた妹の背中を叩く。
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作者名：いちご | 作成日時：2020年2月15日 18時
