それでも好きになった。③ (ページ34)

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No.134 ページ34

それから、渡辺くんは目黒くんと話があると言って、

解散ということになった。

その帰り道、湊ちゃんはふと私に尋ねた。

「聞かないんだ？

……さっきのこと」

そう言って、

湊ちゃんは私を見た。

「………いいよ」

私はひどく間を開けてからため息混じりに答えた。

聞かれたくないことなんだろうし、

……目黒くんの様子を見る限り。

「……聞いてもいいとおもうけどなあー。

だって彼女なんだし。

聞くだけただでしょ」

「…………うざい、かもしれないし」

私は俯いて答える。

「……ま、そうかもしれないけど」

そう言った湊ちゃんは一瞬遠くを見るような顔をした。

「………どこまでが駄目で、

どこまでが許されるラインかが分からないから踏み込めないんだよね」

私は顔を上げた。

「――うん……そうなんだよね」

湊ちゃんの言葉は、私の今の心境にぴったりだった。

――私は、そんな心持ちでいるが故に、

川波さんのことさえも、聞けないままなのだから。

ただ、別れたとしか

……渡辺くんに聞いただけで

そこまでの経緯を何ひとつ知らない。

もしかしたら、目黒くんは

川波さんにまだ気持ちがあるんじゃないかとか、

……そんなことを思えば思うほど悩んでしまう。

そんな状態だから、受け入れることができない。

「木ノ下、さん……か」

呟いてみる。

ひどく寂しくなった。