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No.87 ページ37
「おはよう、Aちゃん」
気を使うべきだろうなと身構え、
席に着くのでさえも緊張していた私に、
康二くんは満面の笑みで声をかけてきた。
「……おはよう……？」
「何、その疑問系の返事。
Aちゃん、
俺が振られたから気使ってへん？」
え、と声が漏れた。
……そんなはっきりいうものなんだろうか。
「たとえ付き合えなくても普通に話したいな。
……まあ、
さすがにまだ心の整理がついてないから、
友達にはなれへんけど」
にっこり笑った康二くんの言葉に、
……私は確信を持った。
「――ごめん。
友達じゃなかったんだね。あの言葉の意味は」
私の言葉に、
康二くんは少し困った表情で笑みを崩した。
「……あーあ。
気付いちゃったか」
……私は泣きそうになっていたらしい。
頭を撫でられた。
「――気にせんといて。
俺が最低なだけや。
……嘘、言ってごめんな」
うっすらと気づいてはいた。
康二くんが初めて私に告白した直後、
友達になろうと言ってくれたけれど
その言葉は、
……嘘なんだって。
もちろん確信はなかったけど悲しくも分かっていた。
――それでも。
「康二くんは、最低じゃないよ……。
……私は、
康二くんと一緒にいて救われたところがあったから。
本当に、ありがとう……」
黙ったまま私を見ていた康二くんは、
それに少し目を見開いて苦笑した。
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作者名：いちご | 作成日時：2020年2月11日 11時
