THIS CRAZY LOVE

日常 ページ21

〜Aside〜

「…乗ってよ。」

悲しそうに宏光が私に言うから、車の助手席に乗り込もうとする。

その時、

「おい…！！」

息を切らして走ってきた藤ヶ谷の声。

「藤ヶ谷…」

呆然として止まる私に、宏光がつぶやいた。

「…やっぱあれが旦那か…。」

「宏光、あれはただの同僚」

「…は？」

「おい、ちげえだろ。お前が不倫相手ってやつか？」

私を介して2人の会話が始まってしまった。

「俺、お前のライバルなんで。」

「え、A、この色黒イケメン君の言ってることなに？」

徐々にヒートアップする2人。住人が何人か集まってしまっている。

「ね、2人！目立つから場所変えよう？ね？」

なんとか2人をなだめて、とりあえず車に乗り込ませた。

私が助手席、宏光が運転席で藤ヶ谷が後部座席。

なんとも言えない微妙な空気と空間に、私は心が折れそうだった。

まさか旦那ではなく、こっちがここで鉢合わせしてしまうとは…。


口を開くにはひらけない。

私は黙って、窓の外を眺めることに徹した。

いつもと変わらない日常、生活。

おかしなことなんてなにもない。


…なにもない。

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