『 無 性 』な ボ ク ５【魔入間】

第２２５話 ページ28

〜



「彼も大切な生徒ですから。」





当然のことをしたまでだと謙遜するダリくん。その目はまるで端からAくんが本当の敵意を持ってここに来ることはないと、分かっていたような目だ。

その気持ちが分からないというわけでもない。



　何と言おうとあの悪魔(コ)は……




＿＿＿＿サリバン様の御前のもと、


＿＿＿＿忠誠と契約厳守をここに明言します。




　Aくんは、イルマくんのSD(セキュリティデビル)だしね

××××××






貴方side



数ヶ月ぶりの教師寮は、何も変わっていなかった。
変わっているとすれば…





『…タバコ、止めたんですか？』





ボク達の部屋に漂う煙の匂いが薄くなっていたことくらいだ。椅子に座って、そういえば昨日から今までにタバコを吸っている姿を見ていないなと気づく。
ボクのベッドに腰掛けた師匠が あ〜…、と何か言いづらそうに目を泳がせる。





「…軽くショックで、ね……。」





『大切な物でも失くしたとか…？』





　そんなにショックを受けるほど大切な物があったなんて



などと失礼なことを考えていると、何故か師匠は呆れたような溜息を零した。まさかボクの心の声が聞こえたのだろうか。
暫く言うのを躊躇っていたようだったが、どうでもよくなったのか、師匠は半ば自棄になってボクへ言い捨てた。





「キミが失踪したショックで吸えなくなったの。」





…………。

……驚き。それだけがボクの中にあった。
教室に戻った時もそうだったが、やたら驚くことが多いのは、ボクがみんなのことを理解していなさすぎるせいなのだろうか。



　……ということは、

　ショックを受けるほど大切なものって…



さっき思った失礼なことが、そのまま自分に返ってきてむず痒く感じる。咄嗟に視線をどこか別の場所へ逸らした。

あの師匠がボクの失踪でタバコを吸えなくなったという情報が思考を駆け回り、よく分からない感情を生み出す。



　………、





『…心配してくれたんですね、』





「当たり前でしょ、
生徒を大切に思わない教師なんていない。



それに…、」





『…？それに………？』





何かを言おうとして言葉を詰まらせた師匠に、頭上で疑問符を浮かべる。すると彼は今度こそ 何でもない、とそれ以上を言わず寝転んだ。



　……そこ、ボクのベッドなんだけどなぁ



〜

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