狙われた奈落 ページ50
手元を離れていった手紙は大事にグルッペン先輩の懐にしまわれていった。にしても長ったらしい文章で「○月△日に城に来るように」と書かれた手紙で何をするつもりなのだろうか？新しい組織の許可は貰っているのに、
「さて、俺はあの人と話してくるゾ」
「こちらで大まかな説明をしておきますので寄り道せずに(激強調)帰って来て下さいね」圧
「...はい」
笑顔()でエーミール先輩が伝えた言葉に小さく返したグルッペン先輩はそそくさと部屋を退室していった。扉が閉まると同時に此方へと振り返る先輩に一瞬肩が跳ねるがいつものほんわかした笑顔の先輩が少し首を傾げながら席をすすめてくれたので少し挙動不審になりながら椅子に腰掛けると
「そんじゃ説明すっで」
「まず俺達が何をしようとしとるかというと」
「今、この国を牛耳る国の王族を引き摺り下ろす事、かな」
「え、」
「そんな事出来るんか？」
思ったより百倍スケールがデカい話に固まる私達に分かりやすく説明していく先輩方の話によると
「確かな情報元からの電報で今城で計画されているのが【アビス完全占拠】らしい」
「ッ！？」
「目的に関してはまだ特定出来てませんが...」
まさか展開に思わず立ち上がったAを隣に座るゾムが心配そうに見上げ袖を引く。ハッとした表情で見下ろし目に見えて動揺する彼女にゾムは原因となる存在を八つ裂きにしたくなった
「...アビスの戦力は？」
「今の状況は正直分かりませんが、昔は自警団が守ってました。父さんもそこに属していたので...っ」
「Aから見てアビスに王族達が狙いそうなもんある？」
「...ッおそらく、」
忘れもしないあの事件の記憶が流れる。遥か昔、勇者と共に悪を滅ぼしたと言い伝えられる呪術師が使用したとされる古代禁術の依代の魔導書、あれしか思いつかない
真っ青な顔でガタガタと身体を震わせる彼女にゾムは腕を引き抱き込み、反対隣に座っていたシャオロンは今も震える冷たい掌を握り締めた
「...この国に遺る聖遺物の1つやな」
「勇者の聖剣、聖女の御旗、騎士の盾...そして術士の魔導書。魔導書以外は既に崩壊したとされているから彼奴らも躍起にやっているのか」
「なんにせよ計画は動き出した。Aはどうする？」
何時もは隠された緑玉が射貫く
跳ねる心臓を押さえつけ唇を噛み締める。そして、
「私も戦いますッ」
「Aッ」
「ええ瞳や。...これより作戦を伝える」
失敗は許されない。心して聞きや
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作者名：零
| 作成日時：2022年7月22日 22時
