無音の果たし状 ページ12
門まで見送りに来てくれた皆に手を振り行きと同じ通路を降りていく。昼夜関係なく薄暗いその道を慣れた足取りで歩く彼らに挟まれて進んで行くと行きと同じ扉に着いた
「向こうは誰も居ないね」
「暫く会えんなぁ…」
「また学校が始まったら同じクラスだから毎日会えるよ」
「！せやな」
心做しか元気が無いように見えるパーカーの顔に励ます様に背中を叩きながら言えば大きく見開きニッと笑う彼に笑い返しながら路地裏を進んで行くと噴水の所に見慣れた魔導車と父さんの姿が見えた。手を振ると直ぐに気づき振り返しながら視線をズラす父さんに首を傾げるが直ぐに車の方に行ってしまった
「？」
「…めっちゃ牽制されたな」
「いいお父さんだね」
「！はいッ！！」
直感的で、かつ直情的な所もあり良く母さんに叱られている父さんだけど何時だった私と母さんの味方でヒーローです、と伝えると驚いた表情の後にまるで強敵に出会ったかの様な顔つきで父さんの方を見るゾム君
運転席の窓からその視線を受け止める父さんとの間には一体なんのやり取りが行われているのだろうか？
「(かかって来いや若造)」
「(絶対認めさせたるわ)」
「(あの人何処かで見た事ある気がするんだけど…)」
「え、と…じゃあ次は学校で」
「！おん、またな」
「またね」
そう言って工具箱を持って魔導車へと向かい、後部座席に荷物を詰めてから我が家へと飛び立った。その姿が見えなくなるまで見送ったゾムとひとらんはゆっくりとウォーモンガへと戻ると
「Aの父親だけど、あの人只者じゃないよ」
「絶対に強い…戦える日が楽しみやわw」
「いや、なんで戦うねん」
「これが噂の「娘が欲しければッ！！」てやつ？」
「ほーん、」
「クハハw面白くなりそうだゾw」
「…迷惑かけたらアカンぞ」
そんな会話を交わしていた一方で夕食を食べ終わり部屋に戻ったAは窓の外になにやら物凄い笑顔で勢い良く鍛錬用の武器で素振りをする父さんを眺めながら「今日なんかあったのかな？」なんてボヤいていたのであった
それから1週間、残りの課題も完成させ
「明日から二学期か」
何が学べるのだろうか、と胸を膨らませながらアイロンがかけられたシワのない制服をハンガーにかけ、忘れ物が無いように確認した鞄を用意して眠りについたのであった
少しずつ変化し始めた相関図の糸はもう平行線に戻れない程に絡まった。その糸の先を掴み取るのは一体、誰か？
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作者名：零
| 作成日時：2022年7月22日 22時
