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店のドアがギイっと鳴ると同時に、私の胸もトクンと鳴る。
「…噂をすれば…やな」
「…そうみたいだね」
周りを見渡しながら店内へ入ってきた丸山さんは、黒のチェック柄のロングコートに赤いマフラーを巻いていて相変わらずお洒落で見惚れてしまう。
動揺して思わずヤスダのいる方を縋る気持ちで振り向いたがそこに姿はなく、大倉さんが丸山さんと話している様子が見えた。
丸山さんと話す大倉さんの右手はどうやら私に向いている。
その様子をじっと観察していたら、丸山さんと目が合いそうになり慌てて何事もなかったかのようにカウンターに向き直る。
溜息をつく事が出来たのも束の間、私は誰かに肩を優しく2回叩かれた。
誰かというのはもう既に分かりきっている答えなので、私も1度小さく深呼吸をして覚悟を決めて少し後ろに立っている彼の方に笑顔を向ける。
「こんばんは」
「どうも、こんばんは。初めまして、丸山です。隣座ってもいいですか?」
「もちろん、どうぞ」
私がそう言うと、フッと肩の力が抜けたかのように眉を下げて柔らかく微笑んだ丸山さんがコートを脱いで、私の隣に腰を下ろす。
「先週は本当に有難うございました!」
「あぁ、そんなんいいからいいから。
…ちょっと軽く飲みません?」
「そうですね!」
先週の夜、3席分空いていた丸山さんとの距離は、今夜で一気に30cmへと距離が詰まった。
「どれ飲みます〜?」
「じゃあ、これにします」
「どれどれ〜?」
そう言ってメニューを見ようと丸山さんが私の方に体を寄せる。
そのおかげで丸山さんとの距離は30cmなんてものじゃなくなって、ふわふわとした前髪が重く目にかかっている横顔を盗み見る。
「アイオープナー?結構キツめやけど大丈夫?」
「あそこにいるバーテンダーによくキツイの飲まされてるのでだんだん慣れちゃいました」
そう言って違う所にいるヤスダの方を見て少し笑うと丸山さんもフフッと笑ってくれた。
「あ!ちょっと鬱陶しく思われるかもしれんけど、お酒のウンチク喋ってもいい…ですか?」
「どうぞどうぞ!聞きたいです」
「あの…カクテル言葉って知ってます?」
さっきまで私を悩ませていた原因の言葉がまさかもう一度、当本人の口から出てくるとは思わなくて思わず胸が高鳴り顔をそらす。
不思議そうな顔をした丸山さんに「ちらっと聞いたことがあります!」と慌てて返す。
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わい - はじめまして(*^^*)楽しく読ませてもらいました!続きが気になります!更新頑張ってください!楽しみにしてます! (2017年7月10日 1時) (レス) id: 397f5c791b (このIDを非表示/違反報告)
寧々(プロフ) - とっぽっぷさん» コメントありがとうございます!そんなことを言ってもらえて本当に本当に嬉しいです!これからも頑張りますね(^^) (2017年2月25日 22時) (レス) id: 232e24a4a7 (このIDを非表示/違反報告)
とっぽっぷ - かっこいいヤスくんにどんどん飲み込まれてくのが悔しいけどドキドキ!みたいな!させてもらってます(〃п〃) 更新ふぁいとです! (2017年2月24日 8時) (レス) id: 8670bf754b (このIDを非表示/違反報告)
寧々(プロフ) - りんごさん» コメントありがとうございます!楽しみにして下さっている様でとても嬉しいです!!これからも頑張りますね(^^) (2017年2月20日 22時) (レス) id: 232e24a4a7 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - とっても面白いです!バーテンダー、ヤスダくんかっこよすぎて毎日ときめいています 笑。これからも更新楽しみにしています!頑張って下さい! (2017年2月19日 18時) (レス) id: 005b2bfdb0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:寧々 | 作成日時:2017年2月8日 23時