＊22 ページ22
今日は終始忙しそうだったヤスダとはいつものようにたくさんは喋れず少し残念に思いながらも、なかなか夜も深い時間になってきたのでそろそろお会計をするために大倉さんを探した。
｢大倉さ…｣
｢大倉〜〜？｣
私が呼ぶ少し前に例のさっきの3つ隣の男性が随分と慣れた様子で大倉さんを呼んだ。
先を越されたので大人しく引っ込んでいると
｢…彼女のも一緒に｣
あの男性の柔らかい小さめの声が耳に飛び込んできた。
一瞬何を言われたのか分からず、彼の手はこちらに向いているが私に言われているのかどうかすらもよく分からず、慌てて顔を上げ大倉さんと男性を交互に見る。
でも男性は私の方を一度も見ず大倉さんだけを見ていて、大倉さんは私の方を一度だけ見て微笑み
｢了解｣
と一言だけ答えた。
こういう事に慣れていないから、まだ言葉の意味がよく理解出来ず、お礼を言うべきかどうなのかもよく分からないまま戸惑っていると、何も言わないどころか私の方を振り向きもせず男性が外に出てしまった。
やっぱり私のことじゃなかったのかな、と思うとタイミングが掴めず結局何も言うことが出来ないまま彼の背中を見送る。
｢やっぱりあいつ変な奴やんな〜｣
｢…え？そうなんですか？｣
｢うん、昔から変わってへん｣
｢そうなんだ…今日は幾らでしたっけ？｣
｢お金はさっきの奴から貰ってるやん｣
バッと思考回路が停止した。
｢……え？！いつ？！｣
｢え？いやさっきや。Aちゃんも見てたやん〜｣
｢さっき？え？！私のだったの？！｣
出て行ったことを確かに見送ったはずなのに、無意識に店内をキョロキョロしてしまう。
｢あいつ未だにバブルの感覚やからな〜｣
｢どうしよう…大倉さん…私お礼言えてない…｣
｢大丈夫やって。次会ったときに一言だけでも喋ったって｣
｢...うん｣
さっきの男性にヤスダとは全く違う種類の胸の高鳴りを覚えていることに気づく。
｢あの方、お名前は？｣
｢丸山｣
｢丸山さん…｣
忘れないように、忘れられない出会い方をしてくれたあの人の名前を3回繰り返して脳内に焼き付ける。
｢今日もありがとう｣
｢こちらこそ〜ヤス呼んでこよか？｣
｢ううん、忙しそうだから大丈夫ですよ｣
そう言ってドアを開けると接客していたヤスダが一瞬こっちを見て小さく手を振ってくれた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 540人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ジャニーズ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
わい - はじめまして(*^^*)楽しく読ませてもらいました！続きが気になります！更新頑張ってください！楽しみにしてます！ (2017年7月10日 1時) (
レス) id: 397f5c791b (このIDを非表示/違反報告)
寧々(プロフ) - とっぽっぷさん» コメントありがとうございます！そんなことを言ってもらえて本当に本当に嬉しいです！これからも頑張りますね(^^) (2017年2月25日 22時) (レス) id: 232e24a4a7 (このIDを非表示/違反報告)
とっぽっぷ - かっこいいヤスくんにどんどん飲み込まれてくのが悔しいけどドキドキ！みたいな！させてもらってます(〃п〃) 更新ふぁいとです！ (2017年2月24日 8時) (レス) id: 8670bf754b (このIDを非表示/違反報告)
寧々(プロフ) - りんごさん» コメントありがとうございます！楽しみにして下さっている様でとても嬉しいです！！これからも頑張りますね(^^) (2017年2月20日 22時) (レス) id: 232e24a4a7 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - とっても面白いです！バーテンダー、ヤスダくんかっこよすぎて毎日ときめいています 笑。これからも更新楽しみにしています！頑張って下さい！ (2017年2月19日 18時) (レス) id: 005b2bfdb0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：寧々 | 作成日時：2017年2月8日 23時
