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「というか、ここ何処なのよ!帰れないじゃない!」
どれだけ歩いても一向に景色が変わることはなく、ただ森の中をさまよっているだけだった。
BH「何処なんだろうな?強いて言うなら天界と人間界の真ん中?」
「…あのね、こっちはふざけてるんじゃないの。本当に帰して。」
あまりにもニヤニヤしながら言うものだから腹が立って仕方ない。
というか、もう月曜だし大学に行かないといけないしバイトだってある。
BH「ふざけてねえよ。俺は今までお前に嘘なんてひとつも吐いてねえし。」
「…もういいわ。怒ったらお腹空いた。この家何か食べる物無いの?」
とりあえず一昨日から何も食べてないし、空腹が限界なのだ。
腹ごしらえをしないと怒るものも怒れない。
BH「あーそっか、人間って腹減るんだったな。まぁ俺も腹は減るけど。なんか作ってやるよ。」
…この男が作るものなんて信用出来ないけど、とりあえず今はそれに頼るしかない。
それにしてもこの口ぶり、本当に元天使だったりして。
…ありえない、けどどう考えても人間だと思えない。
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…美味しい。
ベクが人間じゃないという事を少し信じてたから、得体の知れない食べ物が出されるかと身構えたけどその必要はなかったらしい。
いずれも朝に相応しいトロトロの卵焼きと、こんがり焼かれたパン。
あとベーコンも最高。
…ダメダメ、ご飯が美味しいだけで信用しかけてる。
私は久しぶりのご飯をたっぷり味わった後、この状況について整理することにした。
「ところで、どうしたら私は帰れるの?ベクが連れてきたんだから帰り方も知ってるよね?」
BH「知ってるけど、教えてやんない。…それより腹減ったんだけど。」
ベクは私が座ってるダイニングの椅子に不気味な笑みを浮かべながら近付いて来た。
どうして教えてくれないの?
それに、お腹が空いたなら自分で何か作ればいいじゃない。
何故か、頭に浮かび上がる疑問を口に出す気にはなれなかった。
ベクは"あの時"みたいに、口角を上げて目を細める。
…初めて血を吸われた"あの日"みたいに。
BH「俺、お前の血がないと死んじゃうって言ったよな?」
「っ…、やめてっ…!」
BH「俺がいた世界では堕天使は美食家って言われてたんだよ。でもその意味がわかった気がする。」
私の腕を掴んだベクに見つめられる。
有無を言わせないその表情に私の選択肢はすぐ捨てられた。
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ぼぷぴ(プロフ) - 貴方様が書くお話、本当に面白いです…!!今回のギョンスのお話も最高でした…いろんな意味でドキドキが止まりませんでした!!これからも応援しています! (2020年3月24日 16時) (レス) id: eb25947e96 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう。(プロフ) - 1話1話がすごく読み応えがあって面白いです。シウミンさんの物語とスホさんの物語が個人的にすごく好きです。これからも作者さんのペースで更新して頂けるとうれしいです。 (2020年3月17日 3時) (レス) id: 622a208a12 (このIDを非表示/違反報告)
猫わかめ - 今日初めてこの小説を見つけたのですが、とてもハマって一気に読んじゃいました。どれも狂気的で特にセフンくんのは結末に鳥肌がたちました。すごく面白かったです。これからも頑張ってください! (2020年2月27日 1時) (レス) id: d5ef40128c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:nel_ | 作成日時:2020年2月2日 1時