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SE「…ごめんね、今のはただの嫉妬だよ。」
「セ、フナ…、」
低くて柔らかい声が耳元で響く。
SE「…ヌナには嫌なことは思い出して欲しくない。前はずっととある事で悩んでたみたいだから…。だから、今ならまっさらなまま全部やり直せると思ったんだ。」
あまりにも悲しそうな声色で呟いた。
確かに、愛する人が苦しんでいた事から開放されたなら、もう二度とそんな想いをしなくていい様に願う気持ちもわかる。
SE「僕はずっとヌナの幸せを願ってる。今までの楽しかった思い出を共有出来ないのは悲しいけど、だからと言って無くなった訳じゃない。嫌な事を思い出して辛くなるくらいなら、初めから僕達の幸せをやり直そう。」
でも、それを決めるのはセフニじゃなくて私じゃないの?
苦しい事も悲しい事もあるから幸せが成り立つんじゃないの?
全部受け入れる事が、生きるって事じゃないの…?
「…セフニ、ありがとう…。」
セフニがぎゅっと抱き締める力を弱めることはなかった。
それは私が自由になれないことを表している証。
セフニの腕の中で囚われて、逃げ出せることなんて出来ないみたいだ。
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私が抵抗しなければ、普通の幸せを享受することが出来る。
かっこいい彼氏が居て、好きだと言ってくれて、これ以上の幸せはないはず。
…なのに、何か引っかかるのは何故だろう。
夜の真っ暗な闇が部屋中を支配する。
何となくセフニに背を向けて目を瞑る。
SE「…Aヌナは覚えてるはずないんだけど、実はプロポーズしてたんだ。」
ぽつり、と今の私が受け止めるには重すぎる言葉が宙に浮いた。
「…そう、だったんた。」
背を向けたセフニから長い腕が伸びて私を包み込む。
それは私の左手に絡められて、しばらくして離れた。
薬指に残る違和感に、すぐにそれが何か分かった。
真っ暗闇なのに眩しいくらいに輝くリング。
SE「…もう一度言うね。僕と結婚して欲しい。」
低く響いた声は震えていて、こんな静寂じゃ聞こえないフリも出来なかった。
「…セフナ、」
SE「僕の何が不満なの?」
私がイェスを即答しない事を知っていたのか、カウンターはばっちりな様だった。
怒りなのか緊張なのかわからないけれど、セフニが落ち着いていないのは明らかだった。
SE「…僕の方が、」
言いかけてしばらく黙り込んだ。
SE「…なんでもない。」
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ぼぷぴ(プロフ) - 貴方様が書くお話、本当に面白いです…!!今回のギョンスのお話も最高でした…いろんな意味でドキドキが止まりませんでした!!これからも応援しています! (2020年3月24日 16時) (レス) id: eb25947e96 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう。(プロフ) - 1話1話がすごく読み応えがあって面白いです。シウミンさんの物語とスホさんの物語が個人的にすごく好きです。これからも作者さんのペースで更新して頂けるとうれしいです。 (2020年3月17日 3時) (レス) id: 622a208a12 (このIDを非表示/違反報告)
猫わかめ - 今日初めてこの小説を見つけたのですが、とてもハマって一気に読んじゃいました。どれも狂気的で特にセフンくんのは結末に鳥肌がたちました。すごく面白かったです。これからも頑張ってください! (2020年2月27日 1時) (レス) id: d5ef40128c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:nel_ | 作成日時:2020年2月2日 1時