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7.少しの希望を ページ9

とにかく私は、村に帰らないといけない。


さっき言ってた「友人」も、きっと人外だろう。


このままここに居続ければ、きっといつかバレて殺されてしまう。



(……そんなの、嫌だ)



だから私は、逃げないといけない。


ここから、ひとりで。



(でも、どうやって?)



私は足を痛めているのに。


立つことすら、ままならないのに。


抜け出すなんて、以ての外だ。



(……どうしよう)



頭にチラつくのは、世間知らずの箱入り娘なりに考えたひとつの方法。


殺される危険性が激増する代わりに、0だった生きて帰る可能性が僅かに生まれる方法。


そもそも、言って直ぐに嘘だとバレてしまうかもしれない。


バレてしまえば、待ち受けているのはーー死、ただひとつ。



(……でも、私は……帰りたい)



帰って、みんなに謝りたいから。


握りしめた手に力を込めて、大きく息を吐く。



その時、ガチャリと客室の扉が開いた。


慌てて身体を起こし、前を見据える。



「……はぁ、ったく……あいつ」



何かぶつぶつと言いながら、翡翠の彼が入ってくる。


これからへの緊張で、酷く手のひらが汗ばんでいた。


彼はすっと真面目な表情に戻り、ベッドに腰掛ける私の前に立って、さっきの問いかけを繰り返す。



「さて。で、家は?」



ひゅぅ、と、乾いた息が口から漏れるのを感じた。


大丈夫、きっと、大丈夫だからーー



「……あの、その」



どもる私に、屈んで背丈を合わせてくれる彼。


村の人達から教わった人外のイメージとかけ離れたその姿に内心驚きつつ、私は震える声で言葉を紡いだ。



「……家、分から、ないんです」



あぁ神様、いらっしゃるならどうか、この嘘に少しの希望をーー。

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設定タグ:歌い手 , 浦島坂田船 , 人外
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ちょこ - 更新が止まってます!戻ってきてください!続き楽しみに待ってます!(´;ω;`) (2019年12月11日 1時) (レス) id: 1b1d47c664 (このIDを非表示/違反報告)
はる - 人外の作品大好きです!これからも更新無理のない程度で頑張ってください! (2019年8月11日 21時) (レス) id: 9386fcb447 (このIDを非表示/違反報告)
関西風しらすぅ@坂田家 - うわ…坂田さん可愛い…志麻さんどこいった…好きやわ…人外もんはいいゾ〜 (2019年7月6日 17時) (レス) id: f34e486c2f (このIDを非表示/違反報告)
風空 - 吸血鬼もの大好きです!また毎日の楽しみが増えました(*´ω`*)更新楽しみに待ってます!自分のペースで頑張ってください! (2019年5月27日 22時) (レス) id: 7d8b5dcb68 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:甘夏れもん | 作成日時:2019年5月26日 20時

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