4.彼のお屋敷 ページ6
「バレてはいけない」という緊張感と、見知らぬ人に横抱きにされている羞恥心で、私は移動中、ずっと目を閉じたままだった。
どんな道を通ってきたのかも分からない。
彼がどんな表情をしていたのかも分からない。
ただ、歩む速度はやけにゆっくりで、私の足に響かないようにしてくれていたのは痛いほど分かった。
どれだけ、そんなことを考えていただろう。
ピタリと、彼の歩みが止まる。
恐る恐る瞳を開くと、そこには驚きの光景が広がっていた。
「……こ、こ……」
掠れた声が零れ落ちる。
目の前にあったのは、視界には到底収まりそうもないくらいに大きいお屋敷。
目だけを動かして彼の向こう側を見れば、そこには高い鉄の柵がそびえ立っていて。
まるでお城のような、そんなお屋敷。
ふと、ギィッと何か軋むような音が聞こえた。
視線を戻すと、お屋敷の玄関が開いている。
身体が再び揺れ始めて、彼が歩き出したのだと察した私は身を縮ませた。
「おかえりなさいませ」
鈴のような声が耳に届き、私はまた視線を走らせる。
お屋敷の中、エントランスにいたのは、給仕服に身を包んだ数人の女性だった。
(……え、待って、この状態、見られてーー)
かぁっと、一気に火照る頬。
少しだけじたばたすると、捻った右足首がズキリと痛んだ。
「あ、の……下ろして……」
「下ろしたとして、そこから歩けないだろ」
「う……」
図星を突かれて、私は何も言えなくなる。
「……そちらの方は?」
「散歩中に見つけた。足捻ってるから手当してやってくれ」
「かしこまりました」
平然とした様子でメイドさんと話す彼の腕の中で、私は必死に羞恥に耐え続けたのだった。
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ちょこ - 更新が止まってます!戻ってきてください!続き楽しみに待ってます!(´;ω;`) (2019年12月11日 1時) (レス) id: 1b1d47c664 (このIDを非表示/違反報告)
はる - 人外の作品大好きです!これからも更新無理のない程度で頑張ってください! (2019年8月11日 21時) (レス) id: 9386fcb447 (このIDを非表示/違反報告)
関西風しらすぅ@坂田家 - うわ…坂田さん可愛い…志麻さんどこいった…好きやわ…人外もんはいいゾ〜 (2019年7月6日 17時) (レス) id: f34e486c2f (このIDを非表示/違反報告)
風空 - 吸血鬼もの大好きです!また毎日の楽しみが増えました(*´ω`*)更新楽しみに待ってます!自分のペースで頑張ってください! (2019年5月27日 22時) (レス) id: 7d8b5dcb68 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:甘夏れもん | 作成日時:2019年5月26日 20時