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3.バレてはいけない ページ5

「お前……」



少し呆然としたような声で声をかけられ、私は恐怖と相まって悲鳴を上げそうになる。


流石に出会ってすぐの人に悲鳴なんて失礼だ、と、残った理性で必死に唇に力を入れた。



「何者だ?」


「えっ、あ……」



そりゃあそうだ。


こんな霧の深い森に、私みたいな小娘がひとりで座っているなんて。


怪しいにも程がある。


その瞳に携えた美しいエメラルドを細め、訝しげに見つめられる。


人と関わることに慣れていない私は、言葉を返すことが出来なくてどもってしまった。



(……失礼だなぁ、私……)



なんて思うけれど、唇はピクリとも動かない。


そんな私の様子を見て、目の前の彼は質問を変えた。



「……怪我、してないか?」


「へっ?」



唐突な予想だにしなかった質問に、素っ頓狂な声が漏れる。


ぽかんとする私を、彼はまたじっと見つめた。



(怪我……)



足首のことが頭をよぎるけれど、流石に出会って数分の人に話すのも申し訳ない。


私はぶんぶんと顔を横に振ったーーけど。


ちらり、と、彼の視線が私の右足首に移る。



「その足だけ?」



また私に視線を戻し、彼は問い掛ける。



(……バレてた)



諦めて正直にこくんと頷くと、彼は眉をひそめて何か考え込んでしまった。



「……こいつじゃない……? でも確かに、この辺りから……」



微かな独り言が、僅かながら耳に届く。


それからしばらく黙り込んだ彼は、やがてひとつ息を吐いて私に向き直り、すっと手を差し伸べた。



(……え、?)



立て、と言いたいのだろうか。



(でも、この足じゃ……立つことも……)



私が躊躇っているのを察したのか、彼は私のすぐ側に寄りーー



ーー背中と膝の裏に、腕を差し込んで持ち上げた。




「ん、な!?」



訳の分からない声が飛び出すけれど、そんな事お構い無し。


彼は私を横抱きにし、軽々と立ち上がる。



「その足でここに放置する訳にもいかないだろ。とりあえず俺の屋敷で治療だけさせてくれ」



すぐ近くで囁くように言われて、私はぎゅっと瞳を瞑った。



(そんなこと、言われても……)



ここまで軽々と持ち上げられると、流石に分かる。



ーー彼は、人外だ。



私が純血だとバレると、殺されてしまうかもしれない。



(……大丈夫。血の違いにさえ気付かれなければ、あとはハーフと何ら変わりないって、村の人達が言ってた)



絶対にバレてはいけない、と、私は強く心に誓った。

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ちょこ - 更新が止まってます!戻ってきてください!続き楽しみに待ってます!(´;ω;`) (2019年12月11日 1時) (レス) id: 1b1d47c664 (このIDを非表示/違反報告)
はる - 人外の作品大好きです!これからも更新無理のない程度で頑張ってください! (2019年8月11日 21時) (レス) id: 9386fcb447 (このIDを非表示/違反報告)
関西風しらすぅ@坂田家 - うわ…坂田さん可愛い…志麻さんどこいった…好きやわ…人外もんはいいゾ〜 (2019年7月6日 17時) (レス) id: f34e486c2f (このIDを非表示/違反報告)
風空 - 吸血鬼もの大好きです!また毎日の楽しみが増えました(*´ω`*)更新楽しみに待ってます!自分のペースで頑張ってください! (2019年5月27日 22時) (レス) id: 7d8b5dcb68 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:甘夏れもん | 作成日時:2019年5月26日 20時

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