10.警告 ページ13
朝食を終え、食器を下げて貰った私は、特に何をするでもなくベッドの上でボーッとしていた。
流石に置いてもらっている身で何もしないのはどうなのか……という気持ちもあったけれど、この足では何をしても足手まといになるばかり。
だからといって他にすることも無く、今の私は完全に暇を持て余していた。
……が。
その暇は、直ぐに一時的に消える事となる。
コンコンッと小気味よく響いた、乾いたノック音によって。
「は、はい」
佇まいを正しながら返事をすると、少しの間の後に重々しい音を立ててドアが開く。
そこに居たのは、まだ会って半日にも関わらず見慣れてしまった彼の姿があった。
「調子はどうだ?」
開口一番そう問いかけてきた人外の彼の言葉に、私は少し口篭る。
その「調子」とは、足のことだろうか。
それとも、失っていることになっている記憶のことだろうか。
「足のことでしたら、痛みは少し引きました。……記憶のことでしたら……まだ、ちょっと……」
そんな嘘をつく度に、私の胸はチクチクと痛む。
目の前の彼も困ったように顔を顰めるものだから、そのチクチクはさらに増していってしまう。
その痛みから逃げるように、私は視線を逸らした。
「……まぁ、仕方ない……か。昨日言った通り、なるべく安静にな」
「はい。ご迷惑をおかけします」
ぺこり、と頭を下げると、彼がくるりと身を翻す気配がした。
顔を上げると、そこにはやっぱり彼の後ろ姿。
「あ、そうだ」
ふと、何かに気付いたように動きを止めた彼に、私はきょとんと首を傾げた。
「昨日、言い忘れてた」
もう一度、私を振り返って私を見つめるエメラルドの瞳。
真剣で真っ直ぐなその輝きに、私の身は少しだけ竦んだ。
「……この屋敷で怪我をすることと泣くことはおすすめしない」
699人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちょこ - 更新が止まってます!戻ってきてください!続き楽しみに待ってます!(´;ω;`) (2019年12月11日 1時) (レス) id: 1b1d47c664 (このIDを非表示/違反報告)
はる - 人外の作品大好きです!これからも更新無理のない程度で頑張ってください! (2019年8月11日 21時) (レス) id: 9386fcb447 (このIDを非表示/違反報告)
関西風しらすぅ@坂田家 - うわ…坂田さん可愛い…志麻さんどこいった…好きやわ…人外もんはいいゾ〜 (2019年7月6日 17時) (レス) id: f34e486c2f (このIDを非表示/違反報告)
風空 - 吸血鬼もの大好きです!また毎日の楽しみが増えました(*´ω`*)更新楽しみに待ってます!自分のペースで頑張ってください! (2019年5月27日 22時) (レス) id: 7d8b5dcb68 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:甘夏れもん | 作成日時:2019年5月26日 20時