狭間に生きるモノたち肆【ars 妖怪】 (ページ12)

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ーS sideー

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潤「翔さん！」

聞き慣れた声に、
もう家の近くまで来れたんだと気づいた。

重たい身体をグッと踏ん張り、
顔を上げると心配そうに俺の顔をのぞき込む潤が立っている。

流石というべきだなあ。
この状態の俺対策もバッチリか。

それなら少し甘えてもいいか…。

翔「ごめん、ちょっと肩貸してくんね？」

潤「謝んなくていいから。家に入ればニノもいるし妖気も安定すると思うよ」

俺の腕を肩に回し、反対の手で腰を支える潤。
いつの間にこんなに男前に育ったんだ？
なんか、すっげー感動。

翔「ここに来たばっかの時は、まだまだ子供っぽかったのになぁ」

潤「え。なんか言った？」

翔「いいや。何でもない」

「そう？」と不思議そうに首を傾げた後、前を向き俺を支える潤。

“この状態”の俺の妖気に当てられないほどの強さと、それをコントロール出来る術を持っている。

こんな頼もしいヤツが仲間で良かったと
つくづく思うわー。

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玄関先でゆっくりと俺を座らせると、「じゃあニノ呼んでくるから！」と潤は、足早に2階へ駆けて行った。

確かニノは今日、
引きこもり宣言をしていた気がすっけど。

ニノもニノで何だかんだ皆に甘いからなぁ。
でも、人魚を相手にした事見抜かれて、
怒られるだろーなぁ。

「この時期に！バカですかアンタ！」
なんて言うんだろう。

…夏に人魚相手にすんのは、
我ながら無謀だったと思う。

勝てたのは相手が異様に“雪女”を警戒して、すぐに逃げてくれたからだろうし。

…“唯の雪男”だと気づかれてたら
どうなってたことやら。

翔「まさか、役に立つとはなぁ…」

瞼を閉じると自然と思い出される
あの時のこと。

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“ここは、君にとって居心地の悪くない場だと思う。
これから先も、ずっと、変わらずな。”

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太郎さん、俺、やっぱり、
ここに来て良かったよ。