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カカシside
「A...?」
『...ありがとう。甘えさせてくれて。』
俺は、突然抱きついてきて俺の肩に顔を埋めて離さないAに、正直戸惑っている。
恐る恐る名前を呼ぶと、お礼を言われた。
Aは、何が不安なんだろう。
結婚したくないのかなぁ...
俺達の世界では、貴族と同じ立場の大名家に嫁ぐことは、女性にとってこの上ない名誉とされていた。
Aにとっては違うのだろうか...
「どういたしまして。
...ねぇA、Aは何が不安?できれば教えてくれないか?」
『.......』
もしかして、気を悪くしたか?
質問にはなかなか答えてくれない。
「もしかして、嫌だっ『ん、言う。』」
『...貴族に嫁げば、贅沢な何も不自由のない生活ができると思われている。
だけど実際は、違うの。女は全員、ただの飾り。綺麗で何でもできる妻を持っていれば、周りからの評価は上がる。
自由は一切ない。
そして、私に流れる犬神の血も直にばれる。そうすれば、私は化物扱いされて人身売買にでも出される。』
世間から見ると良さそうな貴族でも、実際は女を玩具としか見ていない奴もいるらしい。
自由がない...か。
「ごめん。こんなこと聞くべきではなかったね。」
ギュッ
話をしながら震えていたAの背中に添えた手の力を強くする。
「でも、俺が絶対に渡さないから。Aは俺が責任もって持ち帰ってあげる。」
今思えば、よくこんな恥ずかしい台詞を言えたものだ。
だがこの時の俺には、腕の中で小刻みに震える弱りきったAのことしか頭になく、恥じらいなんて一切なかった。
『まだ家を出るまで時間はある...
だから、落ち着くまでこのまま私を温めて?』
この言葉で俺は我にかえり、先程の恥ずかしい言葉を言ったことを後悔した。
だが、同時に理性が吹き飛びそうでもあった。
「ッ...あぁ、分かった。」
無理矢理だが何とか理性を保ち、返事をした。
抱きしめている間、少し前、珀人さんがAの事を話してくれた事を思い出した。
どうやらAは、家族を失って以来人への甘え方を忘れてしまったらしい。
唯一信頼されていた珀人さんですら、Aに甘えて抱きつかれたり、悩みを聞かされたりはしなかった。
そして今Aは、少しだけだが俺に甘えてくれている。
それだけで、優越感があり嬉しかった。
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あゆな(プロフ) - この作品好きです!!頑張ってください! あと、アンケートは、1がいいです!! (2018年3月29日 14時) (レス) id: df7e7f04a9 (このIDを非表示/違反報告)
RIG(プロフ) - 作品とても良かったです、夢主ちゃんのSっ気が言いd('e')b、アンケートは、1がいいです。 (2018年3月29日 2時) (レス) id: 0808126aee (このIDを非表示/違反報告)
snow - アンケートは1でお願いします! (2018年3月25日 21時) (レス) id: 575c0714d7 (このIDを非表示/違反報告)
神鬼寺 白姫(プロフ) - 作品、とても面白かったです。アンケートは1がいいです!これからも頑張ってください! (2018年3月21日 23時) (レス) id: 53f9303951 (このIDを非表示/違反報告)
桜野 - 作品読ませて頂きました。とても面白かったです!私は1が良いです! (2018年3月21日 21時) (レス) id: d92671e113 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かんみ x他1人 | 作成日時:2018年2月17日 0時