【男主】笑顔の仮面を貼り付けるピエロ【五奇人】

11つ目の仮面 ページ12

夏目の、琥珀色の、何もかもを見透かしたような目に、見つめられる。


その鋭い視線が、突き刺さる。


周りの4人の先輩方は静かに俺と夏目を見守っていた。



「嘘だよネ、思ってることがあるんだろウ？

君はいつもそうやって笑うけド、何を隠しているノ？


言葉には魔力が宿ル。



Aが、「何もない」「平気だ」「大丈夫だ」って言えバ、


誰もAが助けを求めていることに気が付かなイ。



【答えて。今、Aが思っている、妹への不満は何？

1人で、何と戦っているの？

言ってごらん、言葉にしてごらん。

ボクらが、君を楽にしてあげるから。】」



…なんで、そんな、つらそうな顔をするんだ。


どうして、お前がそんな悲しそうな顔をするんだ。



『…誰も、見てくれない。


誰も、俺を認めない。



同じ、ことを同じだけこなしても、

それ以上の頑張りを見せても、


みんな姫の周りに行くんだ…！



俺は、どれだけ我慢を重ねればいいんだよッ！！

俺は、どれだけ孤独でいればいいんだッ！！


俺だって、褒められたかったッ…！

頑張ったね、って、すごいね、って言われたかったのにッ…！！



いつもいつもいつもいつもいつもいつも！！


なんでだよ！俺が何をしたんだよ…！

なんでいつも俺が嫌われ役で、あいつは好かれるんだ！！

どうして…！やっと居場所ができたと思ったのに…！』



散々笑顔で隠して来た本音。


仕方ない、仕方ないことだ、って仮面で隠して来た素顔。



こんな風に、怒鳴ったことがあっただろうか。



こんな風に、本音をぶつけたことがあっただろうか。



はっと、正気に戻るが、もう遅い。

言ってしまったんだ。今まで、笑ってきたものが、嘘だったと、俺は言ってしまったんだ。




『…ち、ちが、えっと…』



顔が真っ青になって、どうしよう、どうしようと、回らない頭で必死に考える。




「…クックック、最初からそう言っていれば良かったんじゃよ。」


「やっと『ほんね』をいってくれて、うれしいです…♪」


「私が貴方を嫌うことはないと、誓いましょう☆」


「…安心したまえ。皆、Aが裏切ったなどと思っていないのだからね。」


「そう言うことだヨ。

…A、君の言葉が聞きたいナ。

ボクに、言うことがあるよネ？」



目の前の奇人たちは、笑顔だった。



『…ッたすけて…！』




「…フフ、よくできました…♪」




喉から絞り出した声を聞いて、夏目は嬉しそうに笑った。

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