三十二日目 ページ33
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「ごめんね、忙しいところ手伝ってもらって」
「ううん。私も叔父さんにはお世話になったから」
久しぶりの現世。
あまり会うことはなかったけど、会ったときにはよくしてくれていた叔父さんが、肺癌で亡くなったらしい。今日はそんな叔父さんのお葬式だった。
しかしそのお葬式も終盤にかかり、母と一緒に料理の片付けをするけれど、酔っ払った父とその親戚たちの相手をするのは楽じゃない。我が本丸の酒豪たちより手がかかる。
「俺はなぁ、Aとこんなに会えなくて寂しかったんだぞ!」
「はいはい」
「Aー! 愛してるぞぉぉぉぉおお!」
「今お葬式中だからね」
「ごめんね……」
母は申し訳なさそうに謝った。
時刻はもう夜の十時を回っている。夕飯には戻れると思っていたが大分時間が過ぎてしまった。今ごろ、本丸では短刀たちが寝静まって、次郎たちが酒盛りしているのだろう。目に浮かぶ光景に本丸が恋しくなってしまう。
それから帰路につけたのは日付が変わったとき。
いくら政府の人が本丸へのゲートを開けておいてくれるとは言え、こんな時間になっては申し訳が立たない。
「すみません」
「いえ。お気になさらず」
受付の人は優しく言ってくれたが、どうしても罪悪感から縮こまってしまった。
本丸の石畳を踏んで玄関まで急ぐ。
途中で貰ったひきものが入った紙袋がガサガサと言わないように気を付けながら、玄関の戸を開けると何かが突進してきた。
「えっ?」
こんな時間に、こんな所で、私に抱きついてきたのは誰だと思っていると、白い布がひらりと視界を舞った。
「まん、ばちゃん……?」
彼は何も言わないが、返事のように腰に回った腕の力を強める。わざわざ起きて待っていてくれたのだろうか。
「心配した」
小さな、静かでなければ聞き逃しそうな声で、彼は言う。その声が寂しげに震えているのを聞いて、私は荷物を置いてまんばちゃんを抱き締めた。
「ごめんね。それと、待っていてくれてありがとう」
嗚呼、まんばちゃんの温もりは久しぶりだ。たった数日抱きつかれなかっただけで、私はこの温もりを忘れそうになっていた。思わず涙腺が緩みそうになって、私も腕の力を強める。
「話したいことが……あって……」
「じゃあ、お部屋、行こっか」
荷物もそのままに、まんばちゃんと部屋まで歩く。
その間会話はない。それでもまんばちゃんと並んで歩くだけで私は嬉しかった。
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華骸(プロフ) - 小豆☆抹茶さん» コメントありがとうございます! 分かってくれますか、まんばちゃんの可愛さを! 同士ですね(о´∀`о) これからもたくさんまんばちゃんを愛でていきましょう!! (2017年3月22日 21時) (レス) id: 31ae3f7e34 (このIDを非表示/違反報告)
小豆☆抹茶 - まんばちゃんの愛らしさ…凄く分かります!私も、初期刀まんばちゃんです!まんばちゃんです!!!!!! (2017年3月21日 18時) (レス) id: 62f8b9fffc (このIDを非表示/違反報告)
華骸(プロフ) - 亜乃歌さん» コメントありがとうございます! やはりまんばちゃんですよね! みな、違った可愛さが有りますが、まんばちゃんは放っておけないタイプだと私は思います(笑) 読んでくださりありがとうございました!(ノ´∀`*) (2017年1月26日 18時) (レス) id: 31ae3f7e34 (このIDを非表示/違反報告)
華骸(プロフ) - 沖田凛和さん» コメントありがとうございます! これは私の妄想の小説になりますが、実際にこんな感じだと可愛いですよね! と言うか、まんばちゃんの全部が可愛いですよね(*≧∀≦*) (2017年1月26日 18時) (レス) id: 31ae3f7e34 (このIDを非表示/違反報告)
亜乃歌(プロフ) - めっちゃ面白かったです!ちなみに私も初期刀まんばです(´▽`*) (2017年1月25日 21時) (レス) id: a5d27731cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:華骸 | 作成日時:2016年9月24日 21時