三十日目 ページ31
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「っはは。さすが初期刀殿」
鶴丸の喉元に向けられた木刀。こうして勝負が決まるのは十本目だ。防戦一方の鶴丸は参ったと言うように手を上げた。まだ錬度は俺の方が上らしい。
「……手合わせをしてくれて助かった。忙しいところすまなかったな」
「いや、俺も楽しかったぜ! さっ、昼餉の前に汗を流しちまおうぜ」
「なっ! おい」
「はっはっはっはっ!」
鶴丸に無理やり引っ張られ、湯浴みに向かった。
汗を流した後は特にすることもなく、昼餉を食べてから縁側でぼんやりと庭をみることにした。本丸に来て初めて見た景色は緑一色だったが、今は色とりどりの花が咲いている。主と出会ってから静かだった本丸も、短刀から少しずつ集まって賑やかになった。
「まんば、ちょっといいですか」
そこに短刀たちが話しかけてきた。腕組をしては不機嫌そうに眉を寄せている。
「な、何だ?」
「山姥切さんは、あるじさんの事が嫌いになったの?」
「……は」
何を言うんだ。俺が主を嫌いになるはずがない。いや、嫌いになれるはずがない。それは周りが分かっているものだと思っていた。決まって何人かの刀剣は「また主に抱きついてるのか」とからかっていたんだからな。
「主のことは好きだが?」
「なら、なんであるじさまとはなさないのですか!」
「っそれは……」
「あるじさん、ボクたちには何も言わないけど最近元気ないんだ」
「悲しんでた……」
「それに暫く主君と山姥切さんが会話しているところを見ていません」
「あ、主さまはきっと……寂しいんだと、思います……」
「山姥切さんと主君が話しているのを見るのは、僕達も好きなんです」
短刀は次々と想いを口にした。
ここまで短刀に詰め寄られる打刀と言うのも珍しいだろう。それに今は説教されているような形だ。主と俺の関係のことで。
俺は視線を逸らす。
その時に何の飾り気もない左手が視界に入り、胸が痛んだ。
「俺には、主と話す資格がない……」
「資格なんて関係ない。あるじさんは山姥切さんのことが大好きだと思うよ」
─────だから、主さまとたくさん話してあげて。
短刀たちはそう言った。
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華骸(プロフ) - 小豆☆抹茶さん» コメントありがとうございます! 分かってくれますか、まんばちゃんの可愛さを! 同士ですね(о´∀`о) これからもたくさんまんばちゃんを愛でていきましょう!! (2017年3月22日 21時) (レス) id: 31ae3f7e34 (このIDを非表示/違反報告)
小豆☆抹茶 - まんばちゃんの愛らしさ…凄く分かります!私も、初期刀まんばちゃんです!まんばちゃんです!!!!!! (2017年3月21日 18時) (レス) id: 62f8b9fffc (このIDを非表示/違反報告)
華骸(プロフ) - 亜乃歌さん» コメントありがとうございます! やはりまんばちゃんですよね! みな、違った可愛さが有りますが、まんばちゃんは放っておけないタイプだと私は思います(笑) 読んでくださりありがとうございました!(ノ´∀`*) (2017年1月26日 18時) (レス) id: 31ae3f7e34 (このIDを非表示/違反報告)
華骸(プロフ) - 沖田凛和さん» コメントありがとうございます! これは私の妄想の小説になりますが、実際にこんな感じだと可愛いですよね! と言うか、まんばちゃんの全部が可愛いですよね(*≧∀≦*) (2017年1月26日 18時) (レス) id: 31ae3f7e34 (このIDを非表示/違反報告)
亜乃歌(プロフ) - めっちゃ面白かったです!ちなみに私も初期刀まんばです(´▽`*) (2017年1月25日 21時) (レス) id: a5d27731cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:華骸 | 作成日時:2016年9月24日 21時