ぱらぱら。 ページ9
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頭を撫でた後、「へ...?」という先生の間抜けな声を耳にしてから、今更ながら俺は自らの失態に気づいた。
さっきまで、冗談が通じる仲までいってないとか、どうちゃらこうちゃら言っていたのに結局撫でてしまった。
先生はぽかーんと口を開けて俺を見ているし、
俺は俺で頭に手を置いたままそんな先生を見ている。
頭では「どうしよう」その文字しかないが、
人の感情を読み取る能力は残念ながらも人間には備わっていないので俺が先生の可愛さについて語っていたとしても、先生は勿論のこと気づかないだろうし、何も焦ってないですよという顔さえできていれば今更焦っているというカッコ悪い自分を知られなくて済むという訳だ。
なぁんて、考えているが、
さて、どうしよう。
「....や、山田くん..?」
先に言葉を発したのは先生の方だった。
声だけで、戸惑っているのが伝わってくる。
「...すみません!!」
と、頭を下げ、先生の頭に置きっ放しだった手を下ろした。
いや、正しく言うと、下ろそうとした。
ぱっと先生に手首を掴まれたのだ。
「...え..?」
今度はこっちがぽかーんと口を開けるほうだ。
その声ではっとしたのか先生はぱっと手を離した。
「...え、えっとこれは..その..ね?..」
と先生は慌てているし、おまけに顔から首まで真っ赤に染まっている。
「...下ろすのを...止めようとしたんじゃないの...なのに、なんか反射的に掴んじゃって...あの..本当にごめんね...」
ぽんっ
なんか、必死に話してる先生がすごくかわいくて。
反射的に。なんて、嬉しいことを平気に言ってのけちゃう先生がすごくかわいくて。
こんなにも先生によって心を振り回されてるのが悔しくて。
でも、俺の行動で照れてくれたことが何よりも嬉しくて。
たった今授業が始まるチャイムが鳴ったこととか、
次は社会だから相葉先生に怒られるかなとか、
そんなことは、何も気にせずに。
震えてる右手で先生の頭に手を置いて、
優しく、これ以上ないくらい優しく。
その頭を撫でた。
先生は目を真ん丸くしてたけど、
段々と目を閉じて、ただそのまま、俺に撫でられていた。
少し微笑みながら目を瞑る先生は、猫みたいでかわいかった。
数分経ったころ、ゆっくりと先生は目を開けて、
俺の頭を優しく撫でた。
「...やまだくん、ありがとね」
いつもより、
ふわふわとした声で、口調で、そう話しかけた。
「いいえ」
俺の声もいつもより柔らかく。
優しくなっていた。
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konokuro(プロフ) - あひる☆さん» 1を最後まで読んで頂きありがとうございました^ - ^ 2も楽しみにしてくださいな! (2020年3月15日 21時) (レス) id: 8ceddc39fa (このIDを非表示/違反報告)
あひる☆(プロフ) - konokuroさん» 移行に行こう〜〜〜♪わーわー。。どきどきっ。。 (2020年3月15日 14時) (レス) id: 15b8e56e15 (このIDを非表示/違反報告)
konokuro(プロフ) - あひる☆さん» あひるん!!!コメントありがとうございます^ - ^ そんなこと言っていただけるなんて....!! こちらも早め早めの投稿を心がけます!^ - ^ (2020年2月29日 1時) (レス) id: 8ceddc39fa (このIDを非表示/違反報告)
konokuro(プロフ) - うさこさん» こんばんは。今回もお待たせいたしました...m(_ _)m そう思っていただけて嬉しいです^ - ^ そうなんです!複雑な感情と天気雨をかけてみました笑 晴れなの?雨なの?どっちなんだい!笑 (2020年2月29日 1時) (レス) id: 8ceddc39fa (このIDを非表示/違反報告)
あひる☆(プロフ) - 複雑な心情を読ませていただきました〜〜♪はぁぁー・・よい!よいなぁ〜〜。ちねさんのきもちっ!!またまた楽しみにまっとりますぅ〜〜♪ (2020年2月28日 18時) (レス) id: f52dbdb7e8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:konokuro | 作成日時:2019年6月22日 23時