10年後雲雀さんには敵いません。 (ページ26)

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きもちページ26

香桃葉が雲雀を避け始めてから1ヶ月が経った。

給食を食べていると、校長先生の放送が始まった。

【春から小学校でみんなと一緒に過ごした雲雀先生は、今日でお別れになりました。明日からはイタリアで、お仕事をされるそうです。それでは雲雀先生、お願いします。】

雲雀の声に変わり、話し始める。

【全校生のみなさん、先生方、急なことで申し訳ありません。みなさんと過ごした数ヶ月、とても楽しかったです。もしまた機会があれば、よろしくお願いします。】

『え…』

子どもと一緒に給食を食べていた香桃葉も、驚きを隠せなかった。

それから授業はいつも通り行われたが、彼女の心はモヤモヤしたもので覆われていた。

職員室に戻ると、雲雀はいつも通り仕事をしていた。
ただ、いつも整頓されていた机は、いつも以上に綺麗になり、雲雀の面影が残らないくらいだった。

『……。』

カタカタカタ…パソコンの音だけが聞こえる。

『…雲雀さん。』

彼女の声に雲雀は手を止める。

「…なに？」

『…明日からイタリアに戻るんですね。』

「うん。しばらくはこっちに帰れなさそうだから、今日放送させてもらったんだ。突然いなくなったら不信がられるからね。」

まぁこんなこともあるさとでも言いたげな雲雀の様子に、香桃葉はイライラを隠しきれなかった。

『…言ってくれたらよかったのに。』

そう彼女が言うと、

「言うもなにも、君が僕を避けてたからね。言うタイミングもなかったよ。」

そっけなく返された。

『……それもそうですね。すみませんでした。』

自分がそこまで雲雀を傷つけていたのか…と香桃葉は悲しくなった。

「まぁ、気にしてなかったけどね。」

雲雀のその言葉が、余計に彼女を傷つけた。

『…はい。今まで、ありがとうございました。もしまた機会があれば、ご飯とか行きたいです。』

彼女なりの精一杯のお世辞で、雲雀と別れを告げたのだった。