10年後雲雀さんには敵いません。 (ページ19)

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変わっていくもの6 ページ19

香桃葉の話が終わったころ、雲雀が口を開いた。

「ふぅ。言いたいことは全部言えたかい？」

『…ズビッ…はい、大丈夫です。ご静聴ありがとうございました。』

鼻をかみながら一礼する香桃葉を見て、雲雀は笑った。

「君は本当に変わらないね。」

『…え？』

「10年経ってあの頃より大人になってるだろうと思ってたけど、全然だ。」

『いや、さすがにそこまで子どもでは…』

「並中にいたころ、君はいつもまわりくどく話してた。周りに気を遣って、相手を傷つけないように言葉を選んでた。今回だって、普段思ってることがあるのにすまして平気なフリして倒れた。何も変わってないじゃないか。」

『…ごめんなさい。』

「まぁ、どの仕事においてもそうだけど、なんでも自分の思い通りにはいかないよ。」

『はい…それは重々承知してます…でも悔しいんです。』

「悔しいって思えるほど頑張ってるんならいいんじゃないの？」

『もっと、先輩方のお役に立ちたいんです。』

「その気持ちがあれば、大丈夫だと思うよ。」

『でも…。』

「僕は今の君が素敵だと思うよ。」

『…ありがとうございます。』

「つまり、普段からもう少し、素直になることだね。」

ポンッ
そう言って雲雀は右手を香桃葉の頭に乗せた。

『雲雀さんだけには言われたくなかったですけど…ありがとうございます。』

「君、どこまで太々しいの？」

その雲雀の返しがおかしくて、香桃葉は笑った。

『冗談です。元気になりました。ありがとうございます。』

香桃葉はお礼を言った。
すると雲雀は、

「香桃葉。」

『はい？』

「…君は君のままでいいからね。無理しないように。」

『はい。ありがとうございます。またこの借りは返させてくださいね！』

「期待せずに待つよ。」

『期待してくださいよ。』

そう言って2人は微笑み、香桃葉は雲雀宅を後にしたのだった。