あなたの番です 6 (ページ9)

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第159話ページ9

「退院、おめでとうございます」

　事件終息から何日か経った日、将斗さんがついに退院した。その連絡を貰った日から私はこの日が待ち遠しかった。だから、ウキウキで病院に向かった。(病院にウキウキで行くのは変かもしれないが)退院の手続きが既に終わっていたらしく、荷物がまとまって置かれていた。

「ありがとうございます」

　そう答えた将斗さんはいつもの無表情を崩して笑った。

「荷物、持ちましょうか？」

「大丈夫です。ありがとうございます」

　かなり荷物があるが、1人で持てるのだろうか。しかも、やっと退院出来た人が、だ。

「元刑事、舐めてるんですか？」

　考えている事が顔に出てたのだろうか。将斗さんはそんな事を聞いてきた。舐めていると捉えられ、私は全力で否定する。

「そんな訳ないじゃ無いですか！」

「ﾌｯ、、、冗談です。心配してくれてありがとうございます。でも大丈夫です」

「、、、そうですか。キツくなったら言って下さいね。私、ほぼ手ぶらなんでいつでも待ちます」

「分かりました。本当にキツくなったらお願いしますね」

「はい」

　◇

「そういえば、、、これからどうするんですか？」

　私は歩きながらそんな事を聞いた。聞かれた将斗さんは少しの沈黙のうち、「ボランティアでもやろうかと思ってます」と答えた。私の質問の意図はどうやって生活するのか、という意味だったのだが、まぁ良いか。そこも気になってはいたし。

「そう、ですか、、、。やっぱり、刑事の仕事には、、、」

「はい。戻りません。もし、戻れたとしても周りから良く思われないだろうから」

「、、、」

「あ、、、暗くしちゃってごてんなさい」

「いえ、、、私から持ちかけた話題ですし、将斗さんが謝る事じゃ無いです」

　しまったな。せっかく穏やかな気持ちで歩いていたのに、わざわざ暗くしてしまった。沈黙がキツイ。

「あ、、、えっと、、、これから、どうやって生活するんですか？退院したばっかじゃ不安ですよ」

　私は空気を変えるべく本来聞きたかった質問をする。こちらの話題にはすぐに答えてくれた。

「リハビリもちゃんとやりましたし、もう痛くも無いので大丈夫です」

「、、、不安ですね」

「でもそうするしかありませんよ」

「いえ、方法ならあります」

「え、どんな方法が、、、」

　珍しく目を丸くする将斗さん。今日は新しい発見が多いな。それにしても今日の将斗さん、表情、いつもより良いな。

「これは提案でもあります。」

「、、、提案？」

「、、、私と一緒にすみませんか？」